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活用しよう社外の専門家!~メンタルヘルス対策に悩んだら~

承認:エディタ

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『活用しよう社外の専門家!~メンタルヘルス対策に悩んだら~』シリーズ連載開始にあたって
産業医科大学
産業生態科学研究所精神保健学
産業医実務研修センター
廣 尚典(ひろ ひさのり)先生

 

 

 私どもは一般財団法人あんしん財団との共同研究で、職場の心の健康問題対策に役立てていただける「メンタルヘルス対策支援ツール」を開発してきました。ストレスが少なく働きやすい職場づくりのヒントから、不調者が出てしまった際の対応法まで、全部で8種類あります。

 事業主や担当者の方々が、この8つのツールを活用しながら、本コーナーもチェックされて、自社の従業員の心の健康問題に向き合われることを、そしてそれを通じて職場全体の活力が向上することを願って止みません。

 本シリーズでは、職場で起こった、あるいは起こる可能性のある心の健康問題について、相談に乗ってくれる専門家、専門機関を紹介していきます。それぞれの得手、不得手、具体的な相談の仕方なども盛り込んで解説してもらいますので、ぜひお読みください。

2020年3月まで、毎月30日(予定)に計6回シリーズとして掲載いたします。

 

 






第4回 「こころと体の健康、職場の心配ごとを産業保健師に相談してみませんか?」



執筆:白石 明子(しらいし あきこ)先生

一般財団法人 西日本産業衛生会 北九州産業衛生診療所/保健師


1.産業保健師とは
 保健師は主に地域(保健所や市町村)に所属し、乳幼児から高齢者まで幅広い世代に寄り添い、皆様の健康管理をサポートしています。 
 保健師の中で、産業保健師は、働く世代の方と事業所を対象に活動をしています。


  働く人、一人ひとりが自己の健康管理を心がけられるように、そして事業者が安全・健康配慮が行なえるように活動し、アドバイスを行ないます。
 
 あまり知られてはいませんが、保健師は国家資格で、ほとんどの保健師は看護師資格も持っており、第一種衛生管理者の資格も申請で取得できる職場での保健・医療の専門職です。



2.産業保健師の役割・特色

①こころと体の健康をトータルでサポートします!
 「頭痛の原因は、ストレスだった」
 「会議でイライラすると血圧が上がる」
 「花粉症のシーズンはずっと憂鬱になる」など
  
 “こころと体の健康”はつながっていることを経験された方も多いでしょう。
 “こころの不調から体の不調につながること”、逆に“体の不調からこころのバランスを崩してしまうこと”はよくあることです。
  

 こころと体の両面から健康にアプローチできることが保健師の強みです。

 
 【予防が大切!健康診断から体へのアプローチ】
 年1回の健康診断は、生活習慣を見直し、健康について考えるよい機会となるでしょう。健康診断結果を活かすために、保健師による「保健指導」※を利用しましょう。

 保健師が行なう「保健指導」では、健康診断結果の説明や受診勧奨のみではなく、対象者と一緒に生活習慣の振り返りを行ないます。
 
 運動、バランスの良い食事、十分な休養などの健康的な生活習慣は、生活習慣病を予防するだけではなく、ストレス耐性を高めることもできます。
 
 生活習慣を改善し、生活の質をより高める方法を一緒に探していきましょう。

 ※「保健指導」
  労働安全衛生法66条の7
   1.事業者は健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると認める労働者に対し、医師又は保健師による保健指導
     を行なうように努めなければならない。
   2.労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に
     努めるものとする。


 【ストレスチェックからこころへのアプローチ】 

 保健師はストレスチェックの実施者になることが出来ます。実施者は結果を把握し、高ストレス者のフォローが行なえます。
 (高ストレス者が医師面接を申し出た場合は、医師による面接が必要です。)
 
 また、集団分析の結果から組織へもアプローチして職場環境改善の支援も行なっています。

 健康診断とストレスチェックを同時期に行なえば、こころと体の健康のフォローとしての面接が、より自然な形で行なえます。
 こころの不調としては相談しにくい場合でも、体のこととしては相談しやすい場合もあります。
 
 こころと体の健康をトータルでサポートできる保健師にどうぞご相談ください。

②職場の心配ごともご相談ください!
  「病気で、仕事を配慮してほしいけど、言い出せない」
  「同僚の元気がなくて心配だけど、声をかけるとセクハラっていわれそう・・・」
  「うつ病で休んでいた部下をどう迎えいれたらよいのだろう」など、

 “こんなこと、聞いてもいいのかな?”、“誰になんと相談するべきかがわからない”そんな時こそ、気軽に保健師に相談してみてください。

 産業保健チーム(産業医など)の第一窓口として何でも幅広くお聞きし、共に考えます。関係者との調整を行ない、必要な場合には社会資源を探し、専門家に繋げます。
 
 もちろん職場環境の改善についても、ぜひご相談ください。
 
 1つ1つの問題に向き合い、将来にわたって、皆様が健康に過ごし、いきいきと働けるように、体制作りから事業場の皆様と共に一歩ずつ進めます。
 
 必要に応じて事業者へのアドバイスも行ないます。

③信頼できる健康情報を提供し、社会資源と連携します!
 現代社会は様々な健康情報が飛び交っています。役に立つ情報もあれば、全く根拠のない情報もあります。医療の専門家として取捨選択し、信頼できる健康情報を皆様にお伝えします。
 
 「メンタルヘルスのセルフケア」「良い睡眠をとるには」「新入社員の健康管理」など健康教室、衛生講話などの場を通じて多くの方に、健康について学ぶ機会をご提供します。
 
 また、地域医療(病院など)の情報や社会資源(利用できる公的機関など)の情報提供や連携の支援もさせていただきます。


3.産業保健師にはどこで相談できるの?  
①各県の産業保健総合支援センター(無料)
 URL:
https://www.johas.go.jp/shisetsu/tabid/578/Default.aspx
 産業保健関係者を支援するとともに、事業主等に対し職場の健康管理への啓発を行なうことを目的とした機関です。相談対応などで保健師が活動しています。

②地域産業保健センター(無料)
 URL:
https://www.johas.go.jp/shisetsu/tabid/333/Default.aspx
 ①の地域窓口で小規模事業所(従業員50人未満)への支援を行なっています。
 一部では、保健師が、事業場へ訪問や相談対応などを行なっています。

③健診機関・企業外労働衛生機関
 健康診断や健康診断のフォローのみでなく、ストレスチェックや様々な相談、職場の健康管理にも対応している機関が増えてき
ていますので、ご利用機関の提供サービスをご確認ください。
 一部では、嘱託産業医契約のみではなく、嘱託保健師の契約を行ない、年間計画を立てて、事業場のニーズに応じた継続的な健康管理活動を提供している機関もあります。

④開業保健師
 まだ少数ではありますが、契約を行なって、フレキシブルなサービスを提供しています。

⑤健康保険組合
 協会けんぽ等の健康保険組合の保健師は「特定保健指導」(メタボ予防の指導)をはじめ、健康づくり・相談に対応しています。

 ※その他、特定の企業に所属して健康管理を行なう産業保健師もいます。

 
 皆さまが健康で、元気な職場づくりのために産業保健師をぜひご活用ください。