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治療しながら働く人にこれからも活躍してもらうために ~中小企業における治療と仕事の両立支援~

タイトル

【2026年9月より 最新情報に更新】
中小企業にとって従業員は大切な財産です。
その従業員が、がんや脳卒中などの疾病やメンタルヘルス不調の治療をうけながら仕事をすることになった場合、企業として、どのような対応をすれば良いのでしょうか。

2026年4月1日の労働施策総合推進法改正により、「治療と仕事の両立支援」がすべての企業を対象として、事業主の努力義務となりました。
今回は改正情報を含め、中小企業における治療と仕事の両立支援について、経験豊かな専門家のコラムをご紹介いたします。

 

 

監修:柴田 喜幸(しばた よしゆき)先生


産業医科大学 産業医実務研修センター副センター長 教育教授
熊本大学大学院教授システム学専攻博士後期課程で教育設計学を学び2008年より現職。
学内外で「教え方」のワークショップやコンサルティングを行う。
並行して、熊本大学、広島大学、佐賀大学、成城大学等で非常勤教員を歴任。




治療しながら働く人にこれからも活躍してもらうために ~中小企業における治療と仕事の両立支援~


第1回 総論 両立支援とは~両立支援の必要性~ 2026年09月28日公開

第2回 両立支援の具体的な方法(基礎編)      2026年10月公開予定

第3回 両立支援の具体的な方法(実践編)       2026年11月公開予定

第4回 両立支援の具体的な方法(実践編その2)  2026年12月公開予定


第1回 総論 両立支援とは~両立支援の必要性~

 

執筆者 森本 英樹(もりもと ひでき)先生


森本産業医事務所代表
病院・大学・専属産業医の後、森本産業医事務所を開設。
社会保険労務士と公認心理師資格を持つ医師として嘱託産業医、実務家の視点に立ったセミナー講師等を行っている。
主な著作物として『ケースでわかる 実践型 職場のメンタルヘルス対応マニュアル』(中央経済社、向井 蘭弁護士との共著)、『ケースでわかる 治療と仕事の両立支援実践マニュアル』(中央経済社、本山 恭子社労士らとの共著)。





 産業医の森本と申します。
産業医の立場から、企業の皆さんの実情を理解しながら産業医活動を行っています。
これから4回に渡って、「治療しながら働く人」にこれからも活躍してもらう方法を解説します。


まずは、とある会社の社長さんの独り言から。



1.社長の独り言 

 私は従業員20人をかかえる会社の社長です。勤続30年のベテラン社員の営業部長から「話がある」というから聞いてみたら、「肺がんだと分かった。手術することになるかもしれない。」と言われてしまいました。
「タバコ吸いすぎたのか?まあ、会社のことは気にするな。休暇やるからしっかり治して元気になって戻ってこい」と伝えたものの、エース社員が倒れた状況で今後はどうしたものかと思っています。
悩むスーツの男性のイラスト
 そういえば、総務部長から報告があったけれども中途採用した28歳の社員。
病気を隠して入社して、体調が悪くて外回りができない日があると言っているらしい。やれる日はちゃんとやれていると言うものの、この先お客さんからの呼び出しに対応できないと話にならない。こちらも悩ましいものです。


2.両立支援の必要性

 このように病気を持ちながら仕事をする人が増えています。病気を理由として1か月以上連続して休業している従業員がいる企業の割合は、メンタルヘルスが38%、がんが21%、脳血管疾患が12%となっており、仕事を持ちながら、がんで通院している者の数は、49.9万人に上っているとされています。

 以前は治療をしながら働き続けるのは難しいとされていましたが、治療の主体が入院から外来にうつる中で、仕事を続けながら治療を行うことが可能になりました。これを受けて行政は「治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」を発行してきましたが、法改正により、2026年4月から両立支援は事業主の努力義務として労働施策総合推進法に事業主の責務が明記され、その具体的な内容を示すものとして、ガイドラインが「治療と就業の両立支援に関する指針」として整備し直されました(https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001666819.pdf)。
両立支援は大企業だけでなく、中小企業にとっても避けて通れないテーマとなっています。


3.中小企業における両立支援

 中小企業は経営的な余力に乏しく、また従業員1人が担う役割が大きいため、働けなくなった従業員の影響は大きくなります。
一方、労働人口の高齢化で人手不足が深刻化する中、欠けた人員をすぐに補充することは難しく、治療しながらでも働ける従業員には働いてもらいたいのが本音でしょう。むしろ中小企業ほど両立支援に本気で取り組むことが人材確保に直結します。「病気になっても働き続けられる会社」という評判は、社員の帰属意識を高め、採用面でも強みになります。

椅子に座る白衣の男性医師イラスト  働ける人には働いてもらい、休まざるをえない人には就業規則の範囲内で休んでもらう。そのためには、病気の状態と今後の見込みを把握し、できる範囲の支援策を立て、周囲に過度な負担がかからない方法を探ることが必要です。なお、健康経営優良法人の認定要件にも仕事と治療の両立支援が含まれています。



4.両立支援の導入に関するQ&A

Q.相談を受けるときの心構えや気をつけること、担当者としてまずやらなければならないことなどを教えてください。


A.
相談を受ける側として気になること、知りたいことは色々とあるでしょうが、まずは本人の話を聞くことが大事です。
   その上で、プライバシーのことを意識し、会社として配慮を行うためには「誰にどこまで情報を共有してよいか」を本人と確認し、
   事前に同意を得る
ことが必要でしょう。
     会社の休業の制度や金銭面の不安を解消することも重要です。この部分については、第2回で解説します。


Q.「治療と仕事の両立支援」の「治療」にはどのような病気が含まれているのか、教えてください。


A.
治療と仕事の両立支援に必要な病気というのは、病名で決められるものではありません。
  「通院や療養を続けながら働く意欲と能力がある社員」の病気全般が両立支援の対象となります。
   例えば、がんは治療と仕事の両立支援で重要な病気の1つですが、内視鏡ですぐに切除して治療が終了し、
   その後は定期検査のみで仕事にも制限がないような場合には、両立支援の必要性はほとんどないでしょう。