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第5回 メンタルヘルス対策支援ツール6 こころの健康度チェックリスト(職場用・家庭用)

【本文】

第5回 メンタルヘルス対策支援ツール6 こころの健康度チェックリスト(職場用・家庭用)

【執筆:日野 亜弥子(ひの あやこ)先生】産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 助教

「こころの健康度チェックリスト」は,客観的に認められるこころの不調のサインをまとめたものです。職場での「いつもと違う」サインを確認できる「職場用」と,家庭での変化を確認できる「家庭用」の2種類から構成されています。平時からチェックリストの内容を把握し,メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応に結びつけてみませんか。

メンタルヘルス不調には,「眠れない」「食欲がない」「気分が落ち込む」といった自覚症状を伴うものもあれば,自覚症状が乏しく本人は不調であることに気づいていないケースも散見されます。職場の上司や同僚など,普段一緒に過ごしている人の目には「何だか,いつもと違う」と映っていることが,実はメンタルヘルス不調のサインの可能性があるのです。

職場でメンタルヘルス不調者が発生した場合,その不調にできるだけ早く気づき,早期に地域産業保健センターや医療機関など適切な専門機関へつなげることが重要です。その際,従業員自身が体調変化に気づくことに加え,管理監督者をはじめとした周囲の人が従業員の出している不調のサインに気づくことも必要になってきます。特に中小企業においては,メンタルヘルス不調の事例対応の経験が少ないことが一般的であるため,管理監督者が従業員の不調のサインを見落としている可能性があります。


産業保健スタッフが職場のメンタルヘルス不調の問題に対応する際,「疾病性」と「事例性」という言葉を用います。「疾病性」は,病気の診断名や重症度などを指します。一方「事例性」は,労働者本人が,以前と比べてどのように変化しており,どのような苦痛を感じているか,また周囲の者がどのような影響を受けているかを指します。うつ病を例に出すと,診断名である「うつ病」やその重症度は疾病性の評価に該当しますが,「朝起きられず,遅刻が続く」「考えがまとまらず,業務効率が低下している」などの状態は,事例性の評価に該当します。産業保健の現場では,このうち特に「事例性」の評価を重視しており、「こころの健康度チェックリスト」には「事例性」に該当する項目が列挙されています。

チェックリストの活用方法

平時の活用方法 ~不調のサインを知る~

・職場用チェックリスト
まず初めに,事業主や衛生推進者,人事労務担当者の方にチェックリスト全体に目を通していただきます。不調のサインは,勤怠にかかわるもの,仕事のパフォーマンスにかかわるもの,対人関係にかかわるものなど多岐に渡ります。どのようなサインがあるのか,一通りのサインを把握していただきます。その上で,チェックリストの内容について,管理監督者へ周知を行います。管理監督者は,部下一人ひとりの顔を見ることができて,声をかけられる立場の人が良いでしょう。管理監督者が集まる場を利用し,どのような状態が不調のサインに該当するのか認識してもらいます。

・家庭用チェックリスト

メンタルヘルス不調者の支援には,不調者の家族の協力が不可欠です。家庭用チェックリストは社内報に掲載するなど,社内の福利厚生の一環として活用することをお勧めします。

不調が疑われる時の活用方法 ~早めに気付き,繋げる~

・職場用チェックリスト
これまでは認められなかった不調のサインが複数認められる従業員が職場にいた場合,メンタルヘルス不調に陥っている可能性が高まります。管理監督者が本人に声をかけ,最近の心身の健康状態や,職場やプライベートで困っていることはないかについて,話を聞きます。メンタルヘルス不調が強く疑われる場合には,事業主(もしくは衛生推進者や人事労務担当者)に相談した上で,地域産業保健センターや医療機関(精神科や心療内科)へ相談する流れとなるでしょう。チェックリストには,それぞれのサインと関連する「心の健康問題を持つ従業員への対応手順マニュアル」の事例番号が掲載されています。詳しい対応方法を知りたい場合は,対応手順マニュアルを参考にすると良いでしょう。また,チェックリストから客観的な不調は確認できたものの,本人が不調である認識を持っていないときは、「セルフチェックシート」を用いることで,自身の不調の気づきを促し,対処方法を知ることができます。

・家庭用チェックリスト

家庭用チェックリストを併せて使用することで,職場で調子が悪そうな従業員が,家庭においても同様に不調のサインを発しているかどうかを確認することができます。医療機関の受診を本人が拒んでいる場合は,家庭用チェックリストが家族から受診勧奨を行ってもらう手助けになるかもしれません。逆に,従業員の家族が家庭で様子がおかしいのを心配して,職場側に最近の職場での様子を尋ねることもあるでしょう。そのような場合は,家庭用チェックリストを従業員の家族に渡し,具体的な家庭での不調のサインを確認してもらうと良いでしょう。

<参考情報>

8つのメンタルヘルス対策支援ツール
こころの健康度チェックリスト(職場用・家庭用)
こころの健康づくりの相談窓口
中小企業向け心の健康問題を持つ従業員への対応手順マニュアル
こころとからだを守るためのセルフチェックシート

【参照:インデックス】

第1回 ツール1 小規模企業事業主向けメンタルヘルスケア理解のためのアニメ

【執筆:江口 尚(えぐち ひさし)先生】産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学研究室 教授

【サマリー】

「小規模企業事業主向けメンタルヘルスケア理解のためのアニメ」は、社内で活用できるスタッフが限られ、職場のメンタルヘルスに関する経験に限りのあるため、急な社員の休職などメンタルヘルスに関する問題が社内で生じたときに、対応方法が分からず、具体的な対処方法に苦慮する産業医の選任義務のない小規模事業場向けに作成されています。

メンタルヘルスに関する問題が明日生じるかもしれません。皆さんの会社では、メンタルヘルス対応の準備ができていますか?このツールでは、社内でメンタルヘルス対策に取り組むときに「まず最初に何をすれば良いか」「どこに気を付ければよいか」を、事業者目線のアニメーションで、分かりやすく解説しています。

このツールは、そういった小規模事業場において、突然生じるメンタルヘルスに関する課題への対応力、耐性を高めるワクチンになります。

【本文】

変化し続ける仕事を取り巻く環境への適応を求められる労働者の受けるストレスは拡大する傾向にあります。そのため、仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者が半数を超える状況にあります。また、精神障害等に係る労災補償状況の申請件数の増加にも歯止めがかからず、職場のメンタルヘルスの問題は、企業規模に関係なく、経営上のリスクとなっています。

このような中で、心の健康問題が労働者、その家族、事業場及び社会に与える影響は、今日、ますます大きくなっています。こういった状況から、厚生労働省は、2004年10月に
心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~(以下、職場復帰支援の手引き)、2006年3月に労働者の心の健康保持増進のための指針(以下、メンタルヘルス指針)を作成し、公開しました。

さらに2015年12月にストレスチェック制度が義務化され、約5年が経過しました。この間、職場のメンタルヘルスに対する関心は大きく向上し、職場復帰支援の手引きとメンタルヘルス指針は、事業者にとって、知らなかったでは済まされない必ず知っておくべきルールになっています。その結果、特にストレスチェックの実施が義務化された50人以上の事業所においては、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は90%を超えています。

一方で、ストレスチェックの実施が義務化されていない、産業医の選任義務のない50人未満の事業所では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は60%程度となっており、まだまだメンタルヘルス対策が十分に普及していません。


そういった現状を踏まえて、「小規模企業事業主向けメンタルヘルスケア理解のためのアニメ」は、小規模企業の事業主、人事労務担当者・管理監督者の皆様に、職場復帰支援の手引きやメンタルヘルス指針に準拠した形で、職場のメンタルヘルス対策の必要性についてのより深い理解を進め、実践につなげていただくことを目的に作成されました。
「小規模企業事業主向けメンタルヘルスケア理解のためのアニメ」は、入門編3話、実践編4話の全7話から構成されています。


図 「小規模企業事業主向けメンタルヘルスケア理解のためのアニメ」の構成

アニメには、職場のメンタルヘルス対策、対応に困っている様々な事業者と、それをサポートする社会保険労務士が登場します。特に、社内で活用できるスタッフが限られ、職場のメンタルヘルスに関する経験に限りのある小規模事業場においては、急な社員の休職などメンタルヘルスに関する問題が社内で生じたときに、対応方法が分からず、具体的な対処方法に苦慮します。そのため、このアニメでは、社内でメンタルヘルス対策に取り組むときにどのようにすればよいか、事業者目線のアニメーションで分かりやすく解説しています。

「入門編」は、予防のための職場改善や心の健康問題を持つ従業員への対応などについて解説となっており、会社で働く人たちのメンタルヘルス対策の第一歩として行うべき活動について紹介をしています。

「実践編」は、皆さんの会社で職場環境改善に取り組むための参考としていただけるようにしています。第4話で、小規模事業場でも無理なく活力ある職場づくり(職場環境改善)を推進していくための標準的な進め方を解説しています。第5話から第7話では小規模事業場での職場環境改善活動の具体的な事例を紹介しています。

このように、このツールは、小規模事業場のメンタルヘルス対応力、耐性を高めるワクチンとなることでしょう。興味を持った項目から、一度、ご覧ください。

【ツールの活用方法】

1.職場内でメンタルヘルス不調者が発生した時に、事業者や管理職がどのように対応すればよいかを学ぶことができます。

そのため、事業者からそのような相談を受けた社会保険労務士や産業保健スタッフが、職場のメンタルヘルス対応について、事業者との間で共通の理解を形成するために、このアニメの視聴を事業者に依頼すると良いでしょう。
事業者は時間がありませんので、第1話の「事例対応の原則と日頃の対策の重要性」を視聴してもらうだけでも効果があります。

2.第4話から第7話では職場環境改善の進め方について具体的な進め方について学ぶことができます。

「職場環境改善」は職場のメンタルヘルス対策としてとても有効ですが、多くの事業者、労働者にとっては馴染みのない言葉、活動です。
職場環境改善に関心を持ち、社内で職場環境改善活動を進めたいと思っている事業者や人事労務担当者、産業保健スタッフ、社会保険労務士などの社内外の関係者が、月に1回の安全衛生委員会などを活用して、委員に視聴してもらうことで、労働者に「職場環境改善」についての関心をもってもらい、職場環境改善に前向きな職場風土の醸成にきっかけとして活用できます。

3.産業医の選任義務のない50人未満の小規模事業場にとって、地域産業保健センター(以下、地産保)※は頼りになる存在です。ただ、相談内容や利用回数には制限があります。

地産保は、労働者への各種面談や職場訪問をしてくれます。
このツールの「入門編」を視聴すると、相談すべきことがより明確になり、利用回数に制限がある中で、効率的に地産保のサービスを活用することができるようになります。
※地域産業保健センター:独立行政法人労働者健康安全機構が運営する産業保健総合支援センター地域窓口(通称:地域産業保健センター)のことです。おおむね監督署管轄区域に設置されています。労働者数50人未満の小規模事業者やそこで働く方を対象として、労働安全衛生法で定められた保健指導などの以下の産業保健サービスを無料で提供しています。各サービスの利用は原則無料ですが、事前の申し込みが必要です。
「産業保健総合支援センター」・「地域産業保健センター」事業案内(独立行政法人労働者健康安全機構)

<参考情報>(文中のリンク先です)

8つのメンタルヘルス対策支援ツール
小規模企業事業主向けメンタルヘルスケア理解のためのアニメ
心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~
労働者の心の健康保持増進のための指針

第2回 ツール2 週めくりセルフケアカレンダー

【執筆:真船 浩介(まふね こうすけ)先生】産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学研究室 講師

セルフケアカレンダー」は,標語からご自身の課題を見つけて頂くことに加えて,周囲の工夫や配慮,困りごとにも気を配るきっかけになります。 職場の心の健康づくりの導入・計画は,難しく見えるかもしれませんが,このツールで身近な工夫や課題に気づいた時に一歩進めることができます。

セルフケアカレンダー」(表1)は,職場での心の健康づくりのきっかけとするためのツールです。週ごとに心の健康づくり,特に,ご自身の心身の健康を守るための工夫を実践するための標語がまとめられ,様々な取り組みを試すきっかけになります。
とは言え,毎週変わる一つ一つの標語を覚えて,多様な工夫を漏れなく実践する必要はありません。もちろん,標語を全て体得し,心身の健康を守る「セルフケア」の達人を目指すのは理想かもしれません。むしろ,このツールでは,あいさつや報告・連絡・相談等,日頃から心がけている身近な工夫や気配りも,大切な心の健康づくりであることに気づいて頂くことを重視しています。一見,とっつきにくく,難しそうな「心の健康づくり」も,身近にあふれていることを振り返り,心の健康づくりをもう1歩進めるきっかけとしてご活用頂くことが「セルフケアカレンダー」の目的です。

表1:セルフケアカレンダーの標語の概要
 情報共有(朝礼・定例会議など)
 物理/化学的な職場環境 
 事業場外の支援機関との連携
 リーダーシップ 
 チームワーク、組織風土、勤務時間など 
 生活習慣(睡眠、栄養、運動など)
 リラクセーション・笑いなど
 ストレスへの対処方法
 ものの見方や捉え方の偏り
 自発的な相談
 コミュニケーション、職場の支援
 レクリエーション


「セルフケアカレンダー」では,「善は急げ」を期待しています。気になる標語に出会ったら,まずは,ご自身で実践して頂くことを想定しています。できれば,標語の項目を実践した感想などを職場の皆さんと共有してみて下さい。とある標語を実際に実践してみて,その効果の実感や今後も続けられる自信などを話し合えると,その標語を気にしていなかった方や実践・継続に自信がない方にも,標語を読むだけでは得られなかった新しいヒントが見つかるかもしれません。ただ,必ずしも標語の実践を職場の皆さんにおすすめ頂く必要はありません。あくまで,皆さんお一人お一人が,これだ!と気になった標語を実践してみて頂くことが大切です。まずは,「うまくできる」ことよりも,気になった工夫や心がけを「試してみる」ことをおすすめしています。


「セルフケアカレンダー」は,さまざまな「気づき」を提供します。このツールの標語は,ご自身の工夫や心がけのヒントを得るためだけではなく,周囲の方の気遣いや工夫に気づくきっかけにもなります。もし,職場のどなたかが標語を実践されているのに気づいたら,そうした気配り・工夫で助かったこと,嬉しかったこと等を感謝とともにご本人に伝えてみて下さい。こうした工夫と感謝の連なりは,心の健康づくりそのものと言っても過言ではありません。標語を通じて,周囲の配慮や工夫,ひいては困りごとに「気づく」ことが心の健康づくりの重要なきっかけになります。


こうした気づきを心の健康づくりのきっかけとするために,こころの”あんしん”プロジェクトでは,「セルフケアカレンダー」の他にも7つのツールを公開しています。まずは,身近に感じられるツールを組み合わせながら,ご活用下さい。

 

【活用方法】

基本編:気になる標語に出会ったら…

ご自身で気になる標語を実践し,振り返り,改善を図る試行錯誤が基本的な使い方です。
1)試す:気になる標語を見つけたら,まずは,ご自身で実践します。
2)広める:実践した感想を職場の皆さんと共有します。
 ※実践した感想
  ・効果:やってみて良かったこと
  ・継続:無理なく続けられそうか
  ・課題:難しかったこと   等
3)磨く:試してみて,難しかった点等が,職場の皆さんの共通する負担にもなっている場合は,負担となり得る働き方や環境等の改善を提案します。

応用編1:周囲の工夫や配慮に気づいたら…

周囲の方の工夫や配慮を探し,感謝を伝え,ご自身でも実践するきっかけとなる気づきのツールとしても使えます。
1)気づく:標語に似たようなことをしてもらったことがないか,振り返ります。
2)伝える:助かったことや嬉しかったことを具体的に添えて,感謝を伝えます。
3)試す:ご自身でも同じように実践してみます。

応用編2:大事にしたいことに気づいたら…

週めくりで標語との偶然の出会いを活かすだけでなく,身近と感じられる標語や重要さを共感できる標語を探し,計画的に心の健康づくりを進める入口としても使えます。
1)選ぶ:ご自身や職場の皆さんと共感できる標語を探します。
2)練る:標語の内容にまつわる「大事にしたいこと」を職場の皆さんと話し合い,身近で実践できる具体的な工夫に標語を書きかえます。
3)試す:実施する期間等を定めて,職場の皆さんと重点的に実践します。
 ※重点的に実践する期間として,一般に良く知られた啓発期間(表2)を活用するのも一案です。





図1:「セルフケアカレンダー」の基本的な使い方と2つの応用



表2:啓発期間の一例

 期  間 
 内  容 
 3/1-30
 自殺対策強化月間 
 6/1-30
 全国安全週間準備月間
 7/1-7
 全国安全週間
 9/10-16
 自殺予防週間
 9/1-30
 全国労働衛生週間準備月間
 10/1-7
 全国労働衛生週間
 10/10
 世界メンタルヘルスデー
 11/1-30
 過重労働解消キャンペーン
 

 

 

<参考情報>

8つのメンタルヘルス対策支援ツール
活用しよう社外の専門家


 

第3回 メンタルヘルス対策支援ツール5 受診・相談時メモ用紙

【執筆:日野 亜弥子(ひの あやこ)先生】産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 助教

「受診・相談時メモ用紙」は,メンタルヘルス不調が疑われる従業員が医療機関を受診する際や,職場が主治医と情報をやり取りする際に使用できるメモフォームです。メモフォームの使用場面についても,全部で3パターン紹介しています。想定される場面に合わせて,メモフォームを活用してみてはいかがでしょうか。

心の健康問題で会社を休業すること,もしくは,そのまま退職してしまうことは,決して珍しいことではありません。

厚生労働省が実施している労働安全衛生調査によると,メンタルヘルス不調により連続1ヶ月以上休業した労働者の割合は0.4%,退職者の割合は0.2%と報告されています。従業員数10〜29名の小規模事業場においては,休業者の割合(0.2%)よりも,退職者の割合(0.3%)の方が高くなっている特徴があります。 

また,同調査において,メンタルヘルス対策のうち,職場復帰支援に取り組んでいる事業所の割合は,従業員数1,000名以上の事業場では83.9%であったのに対し,従業員数10〜29人の小規模事業場では19.0%と,従業員数が少なくなるほど,職場復帰支援の取り組みに苦慮されている状況が窺えました。

「受診・相談時メモ用紙」は,職場復帰支援の取り組みを手助けするツールです。メンタルヘルス不調が疑われる従業員が医療機関を受診する際や,職場の窓口となる方が,従業員を通して主治医と情報をやり取りする際に役立つメモフォームです。

「メンタルヘルス不調が疑われる社員がいるが,体調が悪そうなので,体調や仕事の状況を主治医に正確に伝えられるか心配している。」「メンタルヘルス不調で従業員が休業してから数ヶ月経過している。職場復帰に向けて,どのような方法で主治医にコンタクトをとれば良いのだろうか?」本ツールが,このような心配・疑問を解決するきっかけになれば幸いです。

メモフォームの記入方法

フォーム1:受診時メモ用紙

「受診・相談時メモ用紙」には,3種類のメモフォームがあります。

「受診時メモ用紙」は,メンタルヘルス不調の疑いのために病院を受診する際,本人が悩んでいる点や主治医に訴えたい点などをあらかじめ整理するためのフォームです。

メンタルヘルス不調の状況下では,その症状による混乱から,具体的にどのような症状があり,どういった生活への支障をきたしているのか,考えを整理するのが難しいことがあります。
初めて病院を受診する前に「受診時メモ用紙」を利用することで,問題点の整理をすることができます。また,主治医に提出してもらうことで,診療に役立てることもできます。体調不良時には多くの設問に答えることが難しいことから,記入するのは必要最低限の項目となっています。

フォーム2:ご連絡

「ご連絡」と「職場復帰に向けてのご連絡」は,職場の担当者が記入するメモフォームで,職場が主治医との連携を進めるために,職場からの積極的な情報提供の支援を行うものです。

「ご連絡」は,従業員が医療機関を受診する際に,職場が本人に関する職場の情報を記入し,主治医に提出することで診療に役立ててもらうためのフォームです。「ご連絡」のみで使用も可能ですが,本人が記入する「受診時メモ用紙」とセットで使用することで,職場からの客観的情報,本人からの主観的情報の2種類の情報を主治医に提供することができます。

また,「ご連絡」は,今後の主治医―職場間の連携を依頼するフォームとしても利用できます。ただし,主治医によっては,本文書のみをもってお返事をもらえるとは限らず,職場が主治医から意見を伺う場合は,本人同意のもとで,診療の同席が必要となることも少なくありません。連携の取り方については,本人を通して主治医へ確認をすると良いでしょう。なお,「ご連絡」は,初診時に主治医へ提出する使用方法を想定していますが,再診時以降の使用も可能です。

フォーム3:職場復帰に向けてのご連絡

「復職に向けてのご連絡」は,休業した従業員が職場復帰するにあたり,会社が復職可能と考える条件や,会社の休業制度,復職後に想定している業務などについての情報を主治医へ提供するフォームです。

メンタルヘルス不調では,回復過程において,症状が落ち着いても生活リズムが整っていない時期や,業務遂行能力(仕事ができる能力)があまり回復していない時期があります。

主治医の「復職可能の診断書」は,本人や家族の焦りや,経済的理由などから,そのような段階でも作成されることがありますが,業務遂行能力がある程度回復していないと,復職しても症状の再燃,再発から,再休職に繋がる危険があります。

「復職に向けてのご連絡」を使用することで,主治医と職場との間の復職時期に関する認識のずれを少なくし,職場復帰支援を円滑に進めることを狙いとしています。

メモフォームの使用機会

「受診・相談時メモ用紙」には,これら3つのフォームとフォームの記入例の他に,職場復帰支援で想定されるパターン別に,メモフォームの使用場面をご紹介しています。

パターン①「メンタルヘルス不調の従業員が初めて病院を受診するとき」
パターン②「メンタルヘルス不調の従業員が長期休業したとき」
パターン③「職場が主治医からの情報を得たいとき」


パターン①では「受診時メモ用紙」と「ご連絡」を,パターン②では「復職に向けてのご連絡」を使用しています。

これら3フォームを提出しても,主治医からお返事がもらえない可能性もあります。

パターン③では,本人に同意をとった上で,診察に同席する方法をご紹介しています。社内にメンタルヘルス不調が疑われる社員がいない場合でも,本ツールに目を通すことで,医療機関受診までの流れや,その後の主治医との連携方法について知ることができます。

<参考情報>

8つのメンタルヘルス対策支援ツール
受診・相談時メモ用紙

第4回 メンタルヘルス対策支援ツール7 心の健康づくり対策充実度診断

【執筆:真船 浩介(まふね こうすけ)先生】産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学研究室 講師

働きやすい職場づくりのきっかけに:心の健康づくり対策充実度診断の活用方法

「心の健康づくり対策充実度診断」は,働きやすい職場づくりを無理なく進めるためのツールです。心の健康づくりは,多岐にわたるため,職場の皆さんの関心が高く,手をつけやすい取り組みから挑戦することが,長続きと広がりの秘訣です。

「心の健康づくり対策充実度診断」は,働きやすい職場づくりを無理なく進めるためのツールです。「働きやすい職場」は,心の健康づくりのゴールの一つです。 心の健康づくりには,数多くの取り組みが関連し,「働きやすい職場」にたどり着く道のりも様々なルートが想定されます。どのようなルートが近道になるかは,職場の状況によって異なります。残念ながら,「働きやすさ」は,取り組みを始めてすぐに効果を実感できるとは限りません。無理なく続けられる息の長い取り組みが必要です。「心の健康づくり対策充実度診断」は,ご自身の職場の強みや関心の強い取り組みを振り返ることで,興味を引かれて,入りたくなるような入口を探し,強みを活かして,無理なく続けられるルートを把握するための「地図」をつくるツールです。

心の健康づくりは,多岐にわたるため,まずは,職場の皆さんの関心が強い内容から,挑戦して下さい。「心の健康づくり対策充実度診断」では,広範な心の健康づくりを5つに大別しています。心の健康に関する知識や実態把握,心の健康を守るための職場や仕事に関する配慮,困りごとを相談できる体制などの一連の取り組みのうち,職場の皆さんの関心の高い活動を探すための話し合いの叩き台として下さい。このツールは,必ずしも,心の健康づくりの「正解」をまとめているわけではなく,決まった取り組みの順番はありません。心の健康づくりは,漠然とした不安感や抵抗感から敷居を高く感じる場合も多いため,まずは,気になる取り組みを手始めにすることが重要です。

心の健康づくりも,できるところから手をつけることが,今後の長続きと広がりの秘訣です。関心があっても,最初から順調に進められるとは限りません。まずは,「心の健康づくり対策充実度診断」で,職場の「強み」を確認し,強みを活かして,挑戦できそうな内容から着手することが長続きの秘訣です。こうした取り組みは,「強み」と似たような内容を漫然と繰り返すことになるかもしれません。定期的に話し合い,職場の皆さんの「関心」や「強み」を確認し,その都度,できることを段階的に積み上げることが大切です。心の健康づくりには、必ずしもマニュアルのような正解はなく,このような定期的な点検による「試行錯誤」が,皆さんの職場に最適な取り組みを築くために必要です。

多岐にわたる心の健康づくりを支援するために,こころの”あんしん”プロジェクトでは,「心の健康づくり対策充実度診断」の他にも7つのツールを公開しています。「心の健康づくり対策充実度診断」で整理した関心の強い課題と関連するツール(表1)を組み合わせながら,ご活用下さい。

 
表1 心の健康づくり対策充実度診断の概要

分 類         内 容                                      関連ツールの一例              
職場環境  職場や仕事についての話し合い 標語集(ツール2)
ラインケア(ツール6)
労働状況  仕事の負担や適材適所への配慮   標語集(ツール2)
ラインケア(ツール6)
心の健康 心の健康に関する調査や配慮 マニュアル(ツール3)
セルフケア(ツール8)
教育研修 心の健康に関する知識の習得 映像資料(ツール1)
標語集(ツール2)
相談体制 安心して相談できる体制整備 相談窓口(ツール4)
受信メモ(ツール5)

【活用方法】

導入編で準備体操

導入編には,心の健康づくりに欠かせない3つの要点が用意されています。いずれも,普段の挨拶や会話,配慮など,これから深める心の健康づくりの重要な基盤です。基本的な内容だからこそ,厳格に点検すると,「あてはまる」とは断言できないような気持ちになるかもしれません。導入編では,心の健康づくりの基盤,つまり,迷った時,行き詰まった時の原点を確認することが目的です。導入編は,完全な達成にこだわり過ぎず,3つの原点を胸に,実践編に挑戦する準備体操としてお使い下さい。

図1 「心の健康づくり対策充実度診断」による働きやすい職場づくりのサイクル

経営者主導で理想を共有

まずは,心の健康づくりの「核」となる職場の強みや関心を整理することが重要です。「心の健康づくり対策充実度診断」に並ぶ項目は,どれもが重要である一方で,早期に全てを網羅することは現実的ではありません。腰を据えて,息の長い取り組みを展開することが重要です。目標を見失わず,続ける士気を保つと同時に,似たような取り組みを続けるマンネリ化を防ぐためには,常に何のための取り組みかを思い出すための「理念」や「方針」が必要です。また,「指示され,やらされる」取り組みよりも,「そうしたい」と自ら感じる取り組みが続けやすいのは言うまでもありません。職場の強みや関心から,多くの従業員の意見や想いが反映された理念や方針をまとめられるのが理想です。

こうした理念や方針は,経営者の皆さんが率先・一貫して周知に努めて頂くことが重要です。息の長い取り組みとするための理念や方針に,従業員の声は欠かせませんが,意見を反映させたからといって,「暗黙の了解」では,心の健康づくりを進める一枚岩にはなれません。心の健康づくりには,あらゆる職場に共通する唯一無二の正解がないからこそ,皆さんが大切にしたいことを折々で声に出して広め,再確認することが必要です。日頃から会社を代表して社内外に情報を伝える経営者の皆さんは,こうした理念や方針を共有できる強力なメッセージを発することができます。

管理職主導で強みや課題を整理

働きやすい職場づくりには,会社・事業場全体の理想描くだけでなく,各職場の具体的な課題・強みを共有することが欠かせません。理念や方針から職場での価値観を共有することは「心の健康づくり」の大切な指針となりますが,それぞれの職場には多様な課題や強みがあります。「心の健康づくり」では,唯一無二の正解を目指す取り組みではなく,こうした多様な課題に対応し,層の厚い強みを鍛えることが重視されています。

職場に共通する強みや課題の整理には,職場を俯瞰できる管理監督者の皆さんが鍵を握ります。一担当者の立場では,ご自身の仕事の課題を整理することはできても,職場や会社全体の中での,ご自身の仕事の意義や必要性を整理することは難しいかもしれません。従業員一人一人の力を合わせた職場の強みを知るには,他を知る管理監督者の皆さんの俯瞰的な視点が必要です。また,仕事の負担も,ご自身が忙しい時や苦手な作業が続く際には,周囲も似たような状況であっても,「隣の芝が青く見える」こともあるかもしれません。職場に共通した課題を整理するためにも,作業を最も良く知る従業員一人一人の視点だけでなく,客観的に観察できる視点が重要です。一つ一つの仕事,一人一人の働きぶりが職場や会社に必要不可欠な意義があることを伝え,職場に共通する課題を整理するには,部下の皆さんがどのような仕事をされているのか,職場や会社でその仕事がどのように位置付けられているのかを把握する管理監督者の皆さんのメッセージが不可欠です。

従業員の参画による改善

働きやすい職場づくりのための具体的な改善には,現場の知恵を共有するコミュニケーションが欠かせません。立派な理念や方針に掲げられ,課題が緻密に整理されていたとしても,現場のニーズに適っていなければ,負担の軽減はもとより,働きやすさの改善も進まない絵に描いた餅になってしまうかもしれません。それぞれの職場や従業員の皆さんには,最前線で起こる様々な課題に対処してきた「現場の知恵」があります。こうした知恵は,一人一人の従業員の皆さんが大切に守り育てて,周囲に共有されることなく,勤め上げ,退職されているかもしれません。こうした貴重な財産を受け継ぐためにも,職場でのコミュニケーションが欠かせません。

働きやすい職場づくりには,現場の知恵を集めた具体的な試行錯誤が必要です。一見すると客観的な正解に見える「答え」も,現場の実作業にあてはめると現実的ではない場合や今までの経緯や事情への配慮に欠く場合も少なくありません。働きやすい職場づくりでは,近道に見える第三者による客観的な提案よりも,現場の知恵を改めて振り返り,有効活用することが急がば回れの最善策になりえます。もちろん,最初から最善策にたどり着けるとは限りません。様々な知恵を試しながら,最善策を探す,改善の挑戦と効果の評価に基づく見直しの繰り返しが重要です。

<参考情報>

8つのメンタルヘルス対策支援ツール
心の健康づくり対策充実度診断


 

第5回 メンタルヘルス対策支援ツール6 こころの健康度チェックリスト(職場用・家庭用)

【執筆:日野 亜弥子(ひの あやこ)先生】産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学 助教

「こころの健康度チェックリスト」は,客観的に認められるこころの不調のサインをまとめたものです。職場での「いつもと違う」サインを確認できる「職場用」と,家庭での変化を確認できる「家庭用」の2種類から構成されています。平時からチェックリストの内容を把握し,メンタルヘルス不調の早期発見・早期対応に結びつけてみませんか。

メンタルヘルス不調には,「眠れない」「食欲がない」「気分が落ち込む」といった自覚症状を伴うものもあれば,自覚症状が乏しく本人は不調であることに気づいていないケースも散見されます。職場の上司や同僚など,普段一緒に過ごしている人の目には「何だか,いつもと違う」と映っていることが,実はメンタルヘルス不調のサインの可能性があるのです。

職場でメンタルヘルス不調者が発生した場合,その不調にできるだけ早く気づき,早期に地域産業保健センターや医療機関など適切な専門機関へつなげることが重要です。その際,従業員自身が体調変化に気づくことに加え,管理監督者をはじめとした周囲の人が従業員の出している不調のサインに気づくことも必要になってきます。特に中小企業においては,メンタルヘルス不調の事例対応の経験が少ないことが一般的であるため,管理監督者が従業員の不調のサインを見落としている可能性があります。


産業保健スタッフが職場のメンタルヘルス不調の問題に対応する際,「疾病性」と「事例性」という言葉を用います。「疾病性」は,病気の診断名や重症度などを指します。一方「事例性」は,労働者本人が,以前と比べてどのように変化しており,どのような苦痛を感じているか,また周囲の者がどのような影響を受けているかを指します。うつ病を例に出すと,診断名である「うつ病」やその重症度は疾病性の評価に該当しますが,「朝起きられず,遅刻が続く」「考えがまとまらず,業務効率が低下している」などの状態は,事例性の評価に該当します。産業保健の現場では,このうち特に「事例性」の評価を重視しており、「こころの健康度チェックリスト」には「事例性」に該当する項目が列挙されています。

チェックリストの活用方法

平時の活用方法 ~不調のサインを知る~

・職場用チェックリスト
まず初めに,事業主や衛生推進者,人事労務担当者の方にチェックリスト全体に目を通していただきます。不調のサインは,勤怠にかかわるもの,仕事のパフォーマンスにかかわるもの,対人関係にかかわるものなど多岐に渡ります。どのようなサインがあるのか,一通りのサインを把握していただきます。その上で,チェックリストの内容について,管理監督者へ周知を行います。管理監督者は,部下一人ひとりの顔を見ることができて,声をかけられる立場の人が良いでしょう。管理監督者が集まる場を利用し,どのような状態が不調のサインに該当するのか認識してもらいます。

・家庭用チェックリスト

メンタルヘルス不調者の支援には,不調者の家族の協力が不可欠です。家庭用チェックリストは社内報に掲載するなど,社内の福利厚生の一環として活用することをお勧めします。

不調が疑われる時の活用方法 ~早めに気付き,繋げる~

・職場用チェックリスト
これまでは認められなかった不調のサインが複数認められる従業員が職場にいた場合,メンタルヘルス不調に陥っている可能性が高まります。管理監督者が本人に声をかけ,最近の心身の健康状態や,職場やプライベートで困っていることはないかについて,話を聞きます。メンタルヘルス不調が強く疑われる場合には,事業主(もしくは衛生推進者や人事労務担当者)に相談した上で,地域産業保健センターや医療機関(精神科や心療内科)へ相談する流れとなるでしょう。チェックリストには,それぞれのサインと関連する「心の健康問題を持つ従業員への対応手順マニュアル」の事例番号が掲載されています。詳しい対応方法を知りたい場合は,対応手順マニュアルを参考にすると良いでしょう。また,チェックリストから客観的な不調は確認できたものの,本人が不調である認識を持っていないときは、「セルフチェックシート」を用いることで,自身の不調の気づきを促し,対処方法を知ることができます。

・家庭用チェックリスト

家庭用チェックリストを併せて使用することで,職場で調子が悪そうな従業員が,家庭においても同様に不調のサインを発しているかどうかを確認することができます。医療機関の受診を本人が拒んでいる場合は,家庭用チェックリストが家族から受診勧奨を行ってもらう手助けになるかもしれません。逆に,従業員の家族が家庭で様子がおかしいのを心配して,職場側に最近の職場での様子を尋ねることもあるでしょう。そのような場合は,家庭用チェックリストを従業員の家族に渡し,具体的な家庭での不調のサインを確認してもらうと良いでしょう。

<参考情報>

8つのメンタルヘルス対策支援ツール
こころの健康度チェックリスト(職場用・家庭用)
こころの健康づくりの相談窓口
中小企業向け心の健康問題を持つ従業員への対応手順マニュアル
こころとからだを守るためのセルフチェックシート

第6回 ツール8 こころとからだを守るためのセルフチェックシート

【執筆:江口 尚(えぐち ひさし)先生】産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学研究室 教授

「こころとからだを守るためのセルフチェックシート」は、従業員自らが自分のストレスを確認し、ストレスに向き合うための日常生活の工夫を紹介するチェックシートです。リモートワークが急速に広がる昨今、メンタルヘルス不調の早期発見、早期対応のためには、一人ひとりの労働者が自分のメンタルヘルスに対する関心を高めることが大切です。このチェックシートは、リモートワーク下での従業員のメンタルヘルス対策にも使えるツールです。 ​

 新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの社会に大きなストレスを与え続けています。そのことは、ここ数カ月、前年比で自殺者数が増加していることにも表れています。特に最近の自殺者数の増加は、男性以上に女性の自殺者数の増加の割合が高いことが特徴です。これまでは、女性の方が男性よりも自殺をしにくいと言われてきました。しかし、現下のフィジカルディスタンスが求められる自粛生活の状況は、男性よりも女性に対してより強いストレスをもたらしているのかもしれません。職場においては、今まで、会社に出勤して働いて、仕事が終わってから居酒屋に行って懇親を深めるという当たり前のことが、当たり前ではなくなりました。

また、テレワークをする機会も増加しました。そのため、職場内のコミュニケーションの質も大きく変化しました。テレワークが広まったことにより、通勤時間の負担が軽減し、生産性が上がったと感じる方がいる一方で、同僚や上司とのコミュニケーションが取りづらくなったことによる孤独感に悩む方、仕事とプライベートのメリハリがつきにくくなったことに悩む方、自宅で仕事をできるスペースが確保できずに悩む方、など様々なストレスが生じています。

さらに、テレワークにより、周囲の気づきによる早期発見、早期対応が難しい状況となっています。このような状況では、メンタルヘルス不調を予防するために、一人ひとりの従業員が、自分のメンタルヘルスに対する関心を高める必要があります。


ツール8「こころとからだを守るためのセルフチェックシート」は、従業員自らが自分のストレスを確認し、ストレスに向き合うための日常生活の工夫を紹介するチェックシートです。
セルフチェックシートでは、ストレスが原因で起こる体調の変化等を確認し、必要であれば医師等の専門家に相談するきっかけづくりを促します。
 
リモートワーク下での部下の体調管理について、多くの管理職が試行錯誤を続けています。そういった管理職に対して、このセルフチェックチェックリストは、一つのガイドになります。
リモートワーク下では、部下の状況が分かりづらいために、管理職に対しては、週に1回など頻度は様々ですが、定期的な面談が推奨されるようになっています。そのような機会に、部下の体調を確認するために、管理職の方には、このチェックリストの活用をお勧めします。

例えば、セルフチェックシートを使って、部下に対して質問をしてみて、気になる点があれば、解説に従って受診を勧めることができるかも知れません。

リモートワークによって、運動不足、間食の増加、筋骨格系の症状(腰痛や肩こり)の増加など生活習慣の乱れが生じやすくなっているとの指摘もあります。そのような生活習慣の乱れは仕事の成果にも影響しますし、ストレス耐性を低下させることにもつながります。

そのため、従業員には自分の生活習慣についての自己管理が求められますし、管理職としては、部下の生活習慣の状況にもある程度関心を持っておく必要があるでしょう。
部下が自分自身のメンタルヘルスへの関心を高めるきっかけとして、管理職から、職場全体に対して、このチェックリストの活用を定期的に促すこともできます。
8つのメンタルヘルス対策支援ツール活用術について6回にわたって紹介した本コラムでは、第1回目は小規模企業事業主向けメンタルヘルスケア理解のためのアニメ(ツール1)第2回目は週めくりセルフケアカレンダー(ツール2)第3回目は受診・相談時メモ用紙(ツール5)第4回目は心の健康づくり対策充実度診断(ツール7)第5回目はこころの健康度チェックリスト(職場用・家庭用)(ツール6)について、第6回目はこころとからだを守るためのセルフチェックシート(ツール8)を紹介してきました。

 前述のように新型コロナウイルスの感染拡大は、働き方に大きな影響を与えています。特に中小企業であればなおさらです。平時よりも、従業員のメンタルヘルス対策に関心を持つ必要があります。一人でも多くの経営者がこれらのツールを使って従業員のメンタルヘルス対策に取り組んでいただくことを期待しています。

 <参考情報>

8つのメンタルヘルス対策支援ツール
こころとからだを守るためのセルフチェックシート

 

 

 

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