H1

第2回 メンタルヘルス対策支援ツール2 週めくりセルフケアカレンダー

【本文】

第2回 ツール2 週めくりセルフケアカレンダー

【執筆:真船 浩介(まふね こうすけ)先生】産業医科大学 産業生態科学研究所 産業精神保健学研究室 講師

セルフケアカレンダー」は,標語からご自身の課題を見つけて頂くことに加えて,周囲の工夫や配慮,困りごとにも気を配るきっかけになります。 職場の心の健康づくりの導入・計画は,難しく見えるかもしれませんが,このツールで身近な工夫や課題に気づいた時に一歩進めることができます。

セルフケアカレンダー」(表1)は,職場での心の健康づくりのきっかけとするためのツールです。週ごとに心の健康づくり,特に,ご自身の心身の健康を守るための工夫を実践するための標語がまとめられ,様々な取り組みを試すきっかけになります。
とは言え,毎週変わる一つ一つの標語を覚えて,多様な工夫を漏れなく実践する必要はありません。もちろん,標語を全て体得し,心身の健康を守る「セルフケア」の達人を目指すのは理想かもしれません。むしろ,このツールでは,あいさつや報告・連絡・相談等,日頃から心がけている身近な工夫や気配りも,大切な心の健康づくりであることに気づいて頂くことを重視しています。一見,とっつきにくく,難しそうな「心の健康づくり」も,身近にあふれていることを振り返り,心の健康づくりをもう1歩進めるきっかけとしてご活用頂くことが「セルフケアカレンダー」の目的です。

表1:セルフケアカレンダーの標語の概要
 情報共有(朝礼・定例会議など)
 物理/化学的な職場環境 
 事業場外の支援機関との連携
 リーダーシップ 
 チームワーク、組織風土、勤務時間など 
 生活習慣(睡眠、栄養、運動など)
 リラクセーション・笑いなど
 ストレスへの対処方法
 ものの見方や捉え方の偏り
 自発的な相談
 コミュニケーション、職場の支援
 レクリエーション


「セルフケアカレンダー」では,「善は急げ」を期待しています。気になる標語に出会ったら,まずは,ご自身で実践して頂くことを想定しています。できれば,標語の項目を実践した感想などを職場の皆さんと共有してみて下さい。とある標語を実際に実践してみて,その効果の実感や今後も続けられる自信などを話し合えると,その標語を気にしていなかった方や実践・継続に自信がない方にも,標語を読むだけでは得られなかった新しいヒントが見つかるかもしれません。ただ,必ずしも標語の実践を職場の皆さんにおすすめ頂く必要はありません。あくまで,皆さんお一人お一人が,これだ!と気になった標語を実践してみて頂くことが大切です。まずは,「うまくできる」ことよりも,気になった工夫や心がけを「試してみる」ことをおすすめしています。


「セルフケアカレンダー」は,さまざまな「気づき」を提供します。このツールの標語は,ご自身の工夫や心がけのヒントを得るためだけではなく,周囲の方の気遣いや工夫に気づくきっかけにもなります。もし,職場のどなたかが標語を実践されているのに気づいたら,そうした気配り・工夫で助かったこと,嬉しかったこと等を感謝とともにご本人に伝えてみて下さい。こうした工夫と感謝の連なりは,心の健康づくりそのものと言っても過言ではありません。標語を通じて,周囲の配慮や工夫,ひいては困りごとに「気づく」ことが心の健康づくりの重要なきっかけになります。


こうした気づきを心の健康づくりのきっかけとするために,こころの”あんしん”プロジェクトでは,「セルフケアカレンダー」の他にも7つのツールを公開しています。まずは,身近に感じられるツールを組み合わせながら,ご活用下さい。

 

【活用方法】

基本編:気になる標語に出会ったら…

ご自身で気になる標語を実践し,振り返り,改善を図る試行錯誤が基本的な使い方です。
1)試す:気になる標語を見つけたら,まずは,ご自身で実践します。
2)広める:実践した感想を職場の皆さんと共有します。
 ※実践した感想
  ・効果:やってみて良かったこと
  ・継続:無理なく続けられそうか
  ・課題:難しかったこと   等
3)磨く:試してみて,難しかった点等が,職場の皆さんの共通する負担にもなっている場合は,負担となり得る働き方や環境等の改善を提案します。

応用編1:周囲の工夫や配慮に気づいたら…

周囲の方の工夫や配慮を探し,感謝を伝え,ご自身でも実践するきっかけとなる気づきのツールとしても使えます。
1)気づく:標語に似たようなことをしてもらったことがないか,振り返ります。
2)伝える:助かったことや嬉しかったことを具体的に添えて,感謝を伝えます。
3)試す:ご自身でも同じように実践してみます。

応用編2:大事にしたいことに気づいたら…

週めくりで標語との偶然の出会いを活かすだけでなく,身近と感じられる標語や重要さを共感できる標語を探し,計画的に心の健康づくりを進める入口としても使えます。
1)選ぶ:ご自身や職場の皆さんと共感できる標語を探します。
2)練る:標語の内容にまつわる「大事にしたいこと」を職場の皆さんと話し合い,身近で実践できる具体的な工夫に標語を書きかえます。
3)試す:実施する期間等を定めて,職場の皆さんと重点的に実践します。
 ※重点的に実践する期間として,一般に良く知られた啓発期間(表2)を活用するのも一案です。





図1:「セルフケアカレンダー」の基本的な使い方と2つの応用



表2:啓発期間の一例

 期  間 
 内  容 
 3/1-30
 自殺対策強化月間 
 6/1-30
 全国安全週間準備月間
 7/1-7
 全国安全週間
 9/10-16
 自殺予防週間
 9/1-30
 全国労働衛生週間準備月間
 10/1-7
 全国労働衛生週間
 10/10
 世界メンタルヘルスデー
 11/1-30
 過重労働解消キャンペーン
 

 

 

<参考情報>

8つのメンタルヘルス対策支援ツール
活用しよう社外の専門家