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こころの“あんしん”イベント Vol.4 シンポジウム報告

行政が進める、守りと攻めの施策

みなさん、こんにちは、森本です。よろしくお願いします。

今日は、健康の視点から見た企業のステップ、健康要素を体系立てて進める手法、健康経営要素の解説といった内容のお話をします。

「健康経営」の参加企業数は、ここ数年かなり増えてきています。上場企業でも毎年100件程のペースで上昇しています。 実際に私も訪問先の企業から健康経営に関する数多くの相談を受けていて、「健康経営」という言葉自体も根付いている印象があります。

こうした状況の中で行政が施策を進めていますが、それには攻めと守りの二つのパターンがあります。社員を大切にして元気な組織を作られている小島社長のお話は、どちらかというと攻めのパターンで、助成金や表彰制度も利用した自立型の産業保健と言えます。「健康経営」は攻めの考え方に入ると思います。働き方改革関連法を中心とした洞澤さんのお話は、法律で制定したことをしっかりと守り、守れない場合は罰則もあります、ということで、こちらは守りのパターンになると思います。どちらが良いの? という話ではなく、どちらも大事ですから、それぞれの会社規模や社風の違いによってアレンジしていただきたいと思います。

「健康経営」の総論と本質

画像多くの経営者が、総論では「健康経営」を良きものとして興味を持っています。社員の健康も大事だと言います。けれども、現実問題として業務の現場に落とし込むと、様々な問題に直面するわけです。「忙しい時に有給なんて承認できない」とか、「残業できない社員に仕事は頼めない」といったが本音が出てくるのです。従業員の立場としても、「体を壊していると思われたら冷遇されるかもしれない」とか、「毎日忙しくて、実際のところ検診を受ける時間がない。異常値が出たとしても自分だけじゃないから気にしない」と思っていたりするのが現実です。そんなときに「健康経営って良いものだから我が社でもやろう」という話が、人事担当者などに突然振られるわけです。

経営者や管理職が現場の状況を把握していない状況では「健康経営」はできません。これは何も健康の話だけでなく、社内の様々な問題に対するこれまでの対処の仕方で自ずと知れることです。「健康経営」の難しさが、このあたりに潜んでいるのです。

健康の視点から見た企業のステップ

そうしたことを前提に、健康の視点から見た企業のステップを四つの型に分けて考えてみました。

一つ目は「法無視型」。これは労働法務を守るなんて非現実的だとの考えが根底にあり、労働基準監督署からの指導も体裁だけ整えようという姿勢です。

二つ目は「法遵守努力型」です。法律は守りたいが、全てに対応するのは難しいので、指摘されたところだけ対処しようというものです。

三つ目は「法遵守型」。企業として法遵守は確実に行い、調査が来ても問題のない形を作り上げるやり方です。

四つ目は「未来志向型」。法遵守は当然のこととして、自社としてのあるべき姿まで見据えて、しっかりとした対応をしようというものです。会社が異なれば、様々な要因の違いによって差異もあることでしょう。規模が大きくなっていけば、必ずしもこうした型通りのステップではないという実感もありますが、自分の会社がどの型にあるかということではなく、少しずつ形が変わっていくことが一つの成果ではないかと思っています。会社の文化や風土も長いスパンでは変わっていくものです。

健康要素を体系立てて進める手法

健康要素を体系立てて進める手法には、様々なものがあります。

ISO45001は労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格ですが、PDCA、つまりPlan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)の枠組みで自主活動を行なって成長していく手法です。

他方で「健康経営」は認定基準の内容などに新たな要素が入ってくることがある点が興味深いです。企業が自社で決めることだけではなく、社会の状況に応じた新しい要素が組みこまれていきます。この点が一つの魅力だと思います。

ISO 45001 / 健康経営

健康経営要素の解説

logo「健康経営」にはいろいろなレベルがあります。一番上は、一業種一社が取得できる「健康経営銘柄」で、今後は複数社の取得も検討されています。ついで「健康経営優良法人」の大企業版と中小企業版があります。さらに「健康企業宣言」といった枠があります。一例として、中小企業部門の「健康経営銘柄」をご覧いただきますと、図のように認定要件がいくつかあります。内容的には、それほど難しくはないのですが、書類審査だけで認定が行われるものですので、実態と書類の内容とが乖離したものにならないような注意が必要です。認証を取ることがゴールではない、ということです。書類を作成する手間暇を無駄にかけただけでは本末転倒と言わざるを得ません。

「健康経営」の認証を受けているのであれば、認証以外の部分もしっかりと配慮するような視点を持つことが大事なのではないでしょうか。一つひとつの対応が形だけを目指しているのか、本気で何かを変えようと思っているのかということが、企業トップにも現場のスタッフの皆さんにも問われているのだと思います。

「健康経営」に取り組む皆さんへ

「健康経営」が大きな広がりを見せる中で、企業が健康要素を体系立てて進めていく様々な手法が整ってきています。この機会に、しっかりと取り組んでいただくことをお勧めします。その際には、認証の取得だけを考えるのでなく、それぞれの課題を踏まえながら進んでいく、規模に応じて対応を変えていくということが大事ではないかと思います。