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こころの“あんしん”ゼミナール Vol.3 メンタルヘルス対策セミナー報告

失敗例と成功例、どこが違うのか

経営者の「当事者意識」と担当者の「熱意」がカギ

では、どのように職場のメンタルヘルス対策を進めていけばよいのでしょうか?
スタート時点でよくある失敗には2つのパターンがあります。
1つは、社長からメンタルヘルス担当として任命されたことで、張り切ってはみたものの、社内を動かす仕組みができず、担当者が一人で空回りしてしまったというパターン。さらには、その担当者自身がメンタルヘルス不調になってしまったという笑えない事例も見聞きします。
逆にもう1つは、社長自らがメンタルヘルス対策が重要だと気づき、自分でカウンセラーの資格を取って取り組もうとしたけれども、周りの社員は皆冷ややかに見ているだけというパターン。社長が変な宗教にはまったと社員から思われてしまった事例もあります。

経営者自身がまず「当事者意識」を持つと同時に、任命されたメンタルヘルス担当者が「熱意」を持って、積極的に周囲を巻き込みながらその職場に応じた方法で対策を進めていくことが重要です。この両方が掛け合わさって初めて、職場のメンタルヘルス対策の歯車がうまく回っていくといえます。

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職場復帰支援の成功事例には経営者説得のヒントがある

職場のメンタルヘルス対策に関する具体的な成功事例については、私が運営に関わっている「こころの耳」で、多くの事例を紹介しています。うつ病などからの職場復帰支援の話題が中心ではありますが、職場のメンタルヘルス対策全般について取材しています。
愛媛県松山市の株式会社ダイキアクシスでは、当初、経営陣はメンタルヘルス対策に消極的だったそうです。しかしながら、担当者が、当時対応していた休業者への説明用に、「職場復帰支援プログラム」を1シートにまとめるなど熱心に取り組んでいました。担当者の熱意が部長を巻き込み、経営陣も動かして、わずか2年で社内体制を整え、「メンタルヘルス推進支援室」の設立までたどりつきました。この例に限らず、職場でメンタルヘルス不調者や休業者が出るなど、目の前の問題にしっかりと対処しなければならなくなったことが、メンタルヘルス対策に取り組むきっかけとなったという企業が多いようです。
メンタルヘルス不調者への対応を経験したことで、毎回毎回個別に対応するのではなく、「職場復帰支援プログラム」を策定するなど仕組みやルール化が図られることになります。その次の段階として、そもそもメンタルヘルス不調者が出ないよう予防に力を入れようと、職場における「心の健康づくり計画」を策定し、相談窓口を設置したり、セルフケアやラインケア研修を計画的に実施したりするなどして、徐々に社内の体制が整備され、メンタルヘルス対策のための人材や予算がつく…こうして取り組みが深まっていくのです。

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また、岐阜県可児市のKYB株式会社では、看護職が従業員全員の面談を行うことからスタート。そのなかで職場の状況が把握できていき、予防の重要性が認識され、階層別研修を行うなど社内の体制を整えていくことにつながりました。ここでポイントとなったのは、看護職による全員面談によって「健康面で何かあれば、この人に相談すればいいんだ」という安心感が職場に生まれ、上司が「あの人に相談に行ってみなさい」と声がけしやすい雰囲気が醸成されたことです。結果として、2年間で「休業率」や「休業述べ日数」が大幅に減少しました。
「休業述べ日数」の減少の効果は休業補償費用の削減だけではありません。休業中の代替要員としての派遣社員などの人件費や新たな人員の募集費、さらには不調者対応に係わる関係者の人件費などの削減にもなるでしょう。無駄な費用を削減することは生産性向上につながります。つまりメンタルヘルスに取り組んだことによって生産性が上がっているのです。経営者にメンタルヘルス対策の予算や人材確保を促すには、メンタルヘルス対策の効果を数字で示して、「メンタルヘルス対策をすると儲かる!」と、経営者を納得させることが重要です。
ちなみに、日産自動車株式会社では、長期休業者の発生率や休業日数などの数値から、年間数億円もの効果があったと試算した上で、円滑な職場復帰につなげるための企業内リワーク施設の開設にこぎつけています。

3 「健康経営」をめざせ

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