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産業医が伝えるメンタルヘルス対策の現実と理想

メンタルヘルス不調者の発生は、労働者の長期欠勤をカバーすることが難しい
中小企業に大きな影響を及ぼします。
「対策の重要性をわかっていても、何をどう取り組んでいいのかわからない」、
そのような現実に産業医から理想的な対策や対応などの基本的事項や取り組みのポイントを学ぶ、
産業医が伝える『メンタルヘルス対策の現実と理想』の4回目をお届けします。
生産性の高い、活き活きとした職場づくりの参考にしていただきたいと思います。
毎月20日(予定)に計9回のシリーズで掲載します。

[第4回] 長時間労働とセルフケア

執筆:深井 航太(ふかい こうた)先生
HOYA株式会社HOYAグループ産業医
慶應義塾大学医学部 特任助教

「働き方改革関連法案」(正式名称:働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案。2019年4月1日施行)が成立しました。同法案は、雇用対策法、労働基準法、労働時間等設定改善法、労働安全衛生法、じん肺法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の労働法の改正を行う法律の通称です。「働き方改革関連法案」は、「Ⅰ.働き方改革の総合的かつ継続的な推進」「Ⅱ.長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等」「Ⅲ.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」の3つを柱としており、「Ⅱ.長時間労働の是正」が最重要課題となっています。

働き方改革関連法案

 どんな人でも1日は24時間と決まっているので、長い時間を働いて帰宅が遅くなると、必然的に睡眠時間が短くなります。睡眠不足が続くと疲労が回復せず、疲労が蓄積して翌日の労働生産性が低下することがわかっています。結果として、翌日の労働時間も長くなるという悪循環を起こします。このような長時間労働は心身の機能に悪影響を及ぼす危険性があります。

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長時間労働で脳・心臓疾患リスクが倍増

 Kivimakiらの研究によると、残業ゼロ相当の人が脳卒中を発症するリスクを1とすると、残業が60時間/月相当の人はリスクが1.33倍と上昇していました。長時間労働によって、なぜ心臓病や脳卒中になりやすいのか。労働時間が長くなると睡眠時間は短くなり、その結果、疲労回復の機会自体が奪われます。体内の働きを無意識のうちに調節する自律神経には、交感神経と副交感神経があり、体を活発に動かすときや仕事をしているときは交感神経が優位に働きます。交感神経は血管を収縮させるため、長時間労働を続けていると血流が悪化し、心臓や脳の血管が詰まりやすくなることが考えられています。さらに、長時間労働に喫煙、飲酒が加わると、より高リスクとなります。長時間労働のストレスでタバコを吸い、お酒も大好きで、メタボ体型という方はくれぐれも注意が必要です。

 こうした人は、会社にとってリスクの高い従業員となります。そのため、長時間労働の管理に、健康診断の結果も併せて考えることが必要となってきます。高血圧、糖尿病などの病気のある人とない人とでは、同じ長時間の労働をさせた場合でもそのリスクは異なるためです。

脳卒中を発症するリスク

メンタルヘルスへの悪影響

 長時間労働は、睡眠不足による疲労のみならず、趣味や会話といった豊かな生活時間が犠牲になり、ネガティブ思考を強め、仕事の処理能力を低下させます。さらにそれが続くと、うつ病や不安障害などを発症するリスクすら高めます。近年実施されているストレスチェックでは、残業時間が高くなるに従い、高ストレス者の割合が増加する、という結果も報告されています。

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まとめ

 働き方改革で謳われる長時間労働の是正には、セルフケアと組織によるケアの2つ側面からアプローチする必要があるでしょう。個人が長時間労働から心身を守るためには、まずは睡眠時間がきちんと確保されているか、一日の生活を振り返ってみることが重要です。さらに、睡眠の質が悪く(寝付きが悪い、途中や早朝に目が覚める、眠りが浅いなど)困っていれば、専門家に相談してみましょう。組織としては、健康の自己管理に関する教育をしつつ、従業員が生活との調和を保って意欲と能力に応じて就業できる環境の整備に努めることが重要です。

【参考文献】

 厚生労働省HP│「働き方改革」の実現に向けて
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
2.Kivimaki M, et al: Long working hours and risk of coronary heart disease and stroke: a systematic review and meta-analysis of published and unpublished data for 603,838
individuals. Lancet 2015; 386(10005):1739-1746.

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