第2回 睡眠
尾久 裕紀(おぎゅう ひろき)
大妻女子大学 人間関係学部 教授
AMAROK JAPAN代表
企業の産業医も務める
睡眠が不足すると脳の機能が低下します。疲労がたまり、仕事の効率も悪くなり、重大なミスにつながることもあります。さらに睡眠不足は免疫力を低下させ、感染症などの病気にかかりやすくなります。
皆様はどのくらいの睡眠をとっているでしょう?日本人の1日の睡眠時間はOECD加盟国の中で最も少なく、7時間22分です(OECD平均が8時間25分)。必要睡眠時間には個人差がありますが、7時間前後はとられた方がよいと思います。睡眠は年齢を重ねるごとに短く、浅くなります。夜中に何度か起きる場合もすぐに眠れるようであれば心配はいりません。
夜遅くまで何かをして、寝る時間が遅くなり、起床時間もだんだん遅くなることがあります。これは「睡眠相後退症候群」と言って、いざ戻そうとしてもなかなか大変です。起きる時間と寝る時間を決めて、土日も大幅に変更しないほうがよいでしょう。
寝つきが悪いという方は、まず生活習慣を見直してください。

寝る4時間前はカフェインを、1時間前はタバコを避けます。カフェインは覚醒作用があり飲んでから4~5時間作用が持続します。タバコにふくまれるニコチンは交感神経を興奮させます。
さらに寝る1、2時間前は、スマホ、PC、テレビは見ない方がよいでしょう。敏感な人はこれらの光刺激が脳を覚醒し、睡眠に悪い影響を及ぼします。
また経営者であれば仕事のことは常に気になるものです。夜は翌日やることをメモに書き留め、それ以降は仕事のことは考えないようにします。このオンオフの切り替えは睡眠にとても重要です。仕事のことをずっと考えていると、交感神経が常に興奮している状態となり、眠れなくなります。
このように睡眠薬を使わなくてもちょっとした工夫で改善することがあります。
一方、いろいろ工夫をしても不眠が改善しない場合は専門医に相談し、必要であれば睡眠導入剤を処方してもらった方がよいでしょう。不眠が続いているのに、「薬は体によくない」とふらふらになりながら頑張るほうが心身に悪影響を及ぼします。