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第4回 健康経営とは

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第4回 健康経営とは

【執筆:洞澤  研(ほらさわ けん)先生】株式会社ゼネラルキャリアサービス 代表取締役、特定社会保険労務士、 健康経営エキスパートアドバイザー

Question?

健康経営について教えてください。

Answer 

健康経営について、一言で説明をするのはなかなか難しいのですが、経済産業省では健康経営の定義について以下の記述があります。

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。 また経済産業省では、健康経営に係る各種顕彰制度として平成26年度から「健康経営銘柄」の選定を行っており、平成28年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設しています。
                    
【出典】 経済産業省ホームページ「健康経営の推進について」(経済産業省 ヘルスケア産業課)

日本健康会議が認定する「健康経営優良法人2020」では、大規模法人部門に1,476法人(うち500法人を「ホワイト500」とする)、中小規模法人部門に4,815法人が認定され、前回から大規模法人で約1.8倍、中小規模法人部門では約1.9倍の認定数となりました。(令和2年9月1日現在)

数字を見ても年々企業の健康経営への意識は高まっていることがわかります。

 

Question?

健康経営優良法人の認定を受けるメリットはどのようなものがあるのでしょうか?

Answer

 健康経営優良法人の認定を受けるメリットですが、大きくは認定を受けることによるメリットと健康経営に取り組むことそのものによるメリットの2つに分かれます。
まず、健康経営に取り組むメリットとしてはジョンソン・エンド・ジョンソン社(Johnson & Johnson)がグループ世界250社、約11万4000人に健康教育プログラムを提供し、投資に対するリターンを試算した所健康経営に対する投資1ドルに対して、3ドル分の投資リターンがあったとされています。

具体的には生産性の向上、医療コストの削減、従業員のモチベーションの向上、リクルート効果、企業のイメージアップなどの効果があったとされています。
    
また、従業員の離職率でみると、健康経営銘柄認定企業平均値(2.7%)健康経営優良法人平均値は(5.1%)と一般企業の全国平均値(11.3%)と健康経営に取組んでいる企業は離職率が低いデータがあります。

 

【出典】 経済産業省ホームページ「健康経営の推進について」(経済産業省 ヘルスケア産業課)

続いて、健康経営優良法人に認定された場合のメリットですが、健康経営優良法人に認定されると、従業員や求職者、関係企業や金融機関などから従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる法人として社会的な評価を受けられます。

また、「健康経営法人」ロゴマークの使用が可能となります。

リクルーティング(人材採用)の視点で見ますと、経済産業省が平成28年に実施した就活生及び就職を控えた学生を持つ親に対して、健康経営の認知度及び就職先に望む勤務条件等についてアンケートを実施したところ、就活生は「福利厚生の充実度」・「従業員の健康や働き方への配慮」との回答が4割を超え、親では「従業員の健康や働き方への配慮」・「雇用の安定」が4割以上を占める結果となりました。

従業員の健康や働き方への配慮」は就活生・親双方で特に高い回答率となり、リクルーティングの視点でも健康経営に取組むことが重要な課題であることがわかります。健康経営優良法人に認定されれば、従業員が安心して働くことができる会社と第三者機関からの認定を受けておりますので、リクルーティングの視点でも大きなアピールポイントになることは間違いありません。

また、健康経営優良法人の認定を受けた企業を対象に地銀、信金等による低利融資など、インセンティブを付与する自治体、金融機関等も増加しています。

健康経営は、大企業はもちろん中小企業こそ取り組んだ時に他社との差別化を図ることができますので、中小企業こそ経営戦略的な視点で健康経営に取組む意義があると考えて頂けたらと思います。

Question?

新型コロナウイルスの流行によって健康経営はどのような影響がありましたか?

Answer 

各種アンケート結果では、新型コロナウイルスへの感染そのものではなく感染拡大防止の為にテレワークが急速に普及し、テレワーク等によって健康状態に影響が見られるとの結果が出てきています。

テレワークによって感じる不調としてオムロンヘルスケア株式会社による、20代から50代のテレワークをしている男女1,000人を対象とした調査では、テレワーク開始後31%の人が身体の不調を感じていました。主な不調ですが、肩こりや精神的なストレス、腰痛が挙げられました。


【出典】 経済産業省ホームページ「健康経営の推進について」(経済産業省 ヘルスケア産業課)

また、新型コロナウイルス感染拡大防止策による外出自粛や生活様式の変化によって、意識や生活行動等に影響を受けたかの調査結果において、「運動する機会や運動量が減った」を回答が多くみられました。


【出典】 経済産業省ホームページ「健康経営の推進について」(経済産業省 ヘルスケア産業課)

これらを総合的に見ると、新型コロナウイルスへの感染予防はもちろん、テレワーク導入に伴う生活様式の変化への対応策(メンタルヘルス対策・運動不足解消など)の重要度が増していると言えるでしょう。

※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

【出典】



【参照:インデックス】