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【最終回】第7回 新型コロナウイルス感染症対策と両立支援

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第7回 新型コロナ感染症対策と両立支援

【執筆:若林 忠旨(わかばやし ただし 先生)】社会保険労務士法人 東京中央エルファロ

昨年より世界的に新型コロナ感染症の影響で日常生活全般にさまざまな制約が出ています。日本では通常、平日は毎日勤務先に出勤をして業務を進めるという働き方が定着しているため、政府などから出勤抑制依頼を受け、さまざまな問題が生じていると思います。 今回は両立支援の対象と考えられる障害者や病気を患っている人や女性・高齢者だけでなく、一般の従業員の方も含めた、仕事と家庭の両立支援で使える出勤抑制方法を解説していきます。

・出勤抑制の方法について~1.フレックス制度の活用~

新型コロナ感染症対策のため政府などにより出勤抑制の具体的な数値目標が発表されています。出勤抑制となるとほぼテレワークへの移行と考えるのが一般的のようですが、方法はそれだけではありません。

例えば、昔からあるフレックスタイム制の導入などによる出勤・退勤時間などを自由に選択できるようにする、1日の勤務時間の制約を従業員本人に任せるという方法でも十分に対応可能となります。もともと両立支援の考え方は「仕事と生活の調和が実現した社会」となります。健康で豊かな生活ができるための時間を確保するうえで、勤務時間管理を従業員に任せる方法は理にかなっていると言えます。

また、この方法の場合、テレワーク導入で問題となっている「コミュニケーション不足」や「一部の従業員のみ出勤強要」などの問題解決に繋がります。理想的にはテレワーク勤務の導入も同時に進め、会議や打ち合わせ参加にWeb会議システムなどのネット参加を認めるようにすることによりより自由度が高まります。こういったことの定着、新型コロナ感染症対策だけでなく、長期的には出勤にかかる交通費の削減や勤務場所を縮小できるため賃料の削減など、会社にとってもメリットが享受できる可能性があります。

もちろん、こういった制度を進めるためには労働法順守のために規程の修正やクラウド型の勤怠管理システムの導入、業務の共有化のためのスケジュール管理や業務ソフトや保存機能のクラウド化なども必要となる点には注意が必要です。

・出勤抑制の方法について~2.テレワーク制度の活用~

現在、出勤抑制の方法としてテレワークを検討する企業が多数を占めています。ただし、昨年発動された1回目の緊急事態宣言時と違い、2021年1月に東京などに発動された2回目の緊急事態宣言ではテレワークを検討する企業が少なくなりました。一般的には業務効率の低下など、仕事を進めるうえでメリットが少ないということが原因とされています。

テレワークを導入する場合に、完全にテレワークにするか、出勤をするかという選択をする企業が多いと思いますが、このような選択をすると制度が利用できる人とできない人の間に区別が生まれてしまい、社内に対立構造や差別的な感情が生まれることとなります。

確かにテレワークになじまない業務は存在しますが、全く導入が出来ない業務は製造や接客など現場対応の業務であり、営業などの業務では方法により導入は可能となります。まずは、週3日間のみなど業務によりテレワーク勤務日の設定などをおこなうことも検討してみましょう。ここで大事なことは、出勤日と出勤時間についてはある程度業務別に分けることです。これにより部署間のコミュニケーション不足などの解消につながります。

また、テレワーク=在宅勤務と同義ではありません。例えば弊社では埼玉県など勤務地ごとにスモールオフィスや会議室、時間貸のオフィスなどを活用し、在宅で勤務が難しい従業員への提供をしています。今後、永続的に制度を導入することを検討していないのであれば、このような場を会社で提供することも検討してみてください。

 新型コロナ感染症対策でおこなっている事案は、そのまま両立支援制度を進める制度としても転用が可能です。障がい者やがん就労など長期に療養が必要な人、低学年の子供を持つ母親など、家庭と仕事の両立を図るために、今回のようなテレワークやフレックス制度などを検討して支援の促進を図ることも身近な両立支援対策となります。

 

【参照:インデックス】