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森 晃爾(もり こうじ)教授が伝える中小企業のための健康経営ゼミナール

執筆 代表・監修:森 晃爾(もり こうじ)先生
産業医科大学産業生態科学研究所 教授

「健康経営の導入は、大企業ではできても、資金も人材も足りない中小企業では難しい」という発言をよく聞きます。
しかし、中小企業では、健康経営の導入が難しいのでしょうか。
私は、中小企業こそ、容易に健康経営を導入することができると思います。
唯一のポイントは、社長がその気になるかならないかです。
「こころの“あんしん”プロジェクト」の新企画として、今話題の健康経営について連載いたします。
毎月1日(予定)に計6回シリーズで掲載します。

[第2回] 「健康経営」が浸透した職場を覗いてみよう!

産業医科大学産業生態科学研究所 教授 森 晃爾

「健康経営」が大切といっても、ピンとこない方も多いでしょう。少し具体的なイメージを持っていただくために、第2回は「健康経営」が浸透した職場と、健康管理面で大きな問題を抱えた職場を対比して描いてみたいと思います。

「健康経営」が浸透した職場

どのような会社でも法律で健康診断が必要ですが、職場の皆さんは進んで健康診断を受けられているでしょうか。健康診断は受けただけでは誰も健康になりません。健康診断の結果に基づいて、生活改善を行ったり、必要な治療を受けたりといったように、健康管理につながることによってはじめて成果と呼べます。「健康経営」が浸透した職場では、当然のことのように職場の全員が健康診断を受診して、必要であれば精密検査を受けたり、治療を受けたりしています。なぜ、そのような行動を取っているか聞いてみると、「老後も健康でいたいという気持ちもあるけど、そもそも健康でなければいい仕事ができないと思っています」と答えが返ってきます。皆さん、いい仕事、すなわち生産性が高い仕事をするためには、自己健康管理が重要だと認識しています。

健康行動は健康診断の時だけではありません。健康管理には、運動、栄養、休養が大切なことは十分に理解して、必ずなにかしら、関連する健康行動を取っています。たとえば、毎朝散歩をしたり、野菜を十分に取ったり、毎日体重計に乗ったり、良好な睡眠を妨げる夜の飲酒を控えたりしています。血圧が少し高いと健康診断で言われた人は、血圧計を自分で購入して、血圧手帳に記録することを日課にしています。もちろん、職場は屋内完全禁煙になりましたので、それを機会に禁煙された人も多かったようです。

このような個人の健康行動は、職場の雰囲気にも反映されています。職場にはお互いの健康には気遣っています。少し仕事で帰りが遅くなる日が続いていると、同僚が体調のことを尋ねます。手が空いている人は、お互いに手伝い合ったりしています。大病をする人も出ていませんし、風邪で休む人もあまり出てきません。今年のインフルエンザシーズンも巷で騒がれたほど感染者がでず、仕事にも影響がありませんでした。

職場の雰囲気は健康への気遣いだけではありません。自分たちの職場を働きやすい場所にしたいと意欲を持っています。いつも、職位に関係なく前向きなコミュニケーションが図られ、職場改善が行われています。働きやすい職場とは生産性の高い職場に他なりません。管理職に状況を尋ねてみると、「以前より無駄な仕事は減ったと思いますし、そもそも部下がいい仕事をしたいと前向きに改善を提案してくるので、自分としても何とか実現させたいと考えています」といったような言葉が返ってきます。小さな職場なので、法律の義務ではありませんが、先日初めて、ストレスチェックを実施してみました。全国平均を100とした健康リスクは82で、かなり良い状況でした。職場のメンバーは、できるだけ長くこの職場で働きたいと思っています。

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健康管理面で問題を抱えた職場

この会社では、定期健康診断は社員に案内されているのですが、毎年、何名かの社員は健診を受けていません。中には、「健診を受けないのは、自分のポリシーだ」と公言している人もいます。健康診断の結果をみると、数名は、精密検査が必要、治療が必要との結果になっていますが、彼らが病院に行ったのかは定かではありません。先日、脳卒中を発症した社員がいましたが、どうも血圧の治療を怠っていたようです。糖尿病を患っている社員も何名かいますが、治療がうまく行っているのか分かりません。すでに退職した方ですが、50歳代中頃で糖尿病による腎不全で透析が必要になった人もいました。

一人ひとりの生活習慣は分かりませんが、喫煙者は依然と多く、打ち合わせと称して喫煙スペースで話し込んでいるメンバーもいます。まだ30歳代なのに、肥満気味の社員も多い状況です。彼らの昼食はカップ麺や菓子パンなどで、夕食もコンビニ弁当のようです。時々、風邪や体調不良で会社を休む社員が出ています。

職場では、皆、黙々と自分の仕事をしているようで、いつも静かです。納期が迫ると、どうしても残業や休日出勤が発生しており、仕事の性質上、仕方がないと割り切っています。また、先日、新しく入社した社員が体調不良を訴えて、結果的に退職しました。どうも職場になじめず、うつ病で精神科に懸っていたようです。

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最後に

二つの会社を描いてみましたが、どのような印象を持たれたでしょうか。会社は仕事をする場所であって、健康になるために来る場所ではありません。しかし、どのような職場で働くかによって、健康度は大きく異なってくると思います。

新しい人を採用することが難しくなった今日、病気で休んだり、退職したりする社員がいることは大きな損失です。また、できれば60歳以降も、さらに65歳以降も働いてもらいたいと思っていても、健康でなければ働き続けることはできません。「健康経営」って、かなり今日的な会社経営の課題に直結するものだと思いませんか?

※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

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