コンテンツ

こころの“あんしん”ゼミナール Vol.2 シンポジウム報告

労災となるメンタルヘルスをブロックすることが重要

某社の女性新入社員の自殺が、2016年秋に労災認定されたニュースは記憶に新しいと思います。また、ある企業では厚生労働省から長時間労働の是正勧告、いわゆる「ブラック企業」であるとして名前が公表されたとたん、株価がストップ安になりました。また別の大企業の管理職が過労自殺した問題では、社長に労働時間を適切に把握するよう指導票が交付されるなど、メンタルヘルス問題で労災認定されると、会社責任が厳しく問われ、企業イメージに大きな傷がつく時代になっています。今やどの企業も、パワーハラスメントや月80時間を超える長時間労働などが続くことのないようにきちんと配慮し、従業員のメンタルヘルス対策の仕組みづくりに力を入れることが不可欠です。
従業員の規模別に、メンタルヘルス対策への取り組みを比較したのが次のグラフです。

大企業は教育も復職支援もできていることが多い一方で、中小企業では研修は実施していても、復職については事例が出てきたら対応すればいいと、仕組みづくりができていないところが出てきます。しかし、休業規定や復職規定を定めておくことは重要事項だといえます。 休業・復職規定づくりのポイントを簡単にまとめました。

◎いつまで休める形にするのか
◎休業申請に必要な診断書が期限切れとならないように
 (傷病手当金の申請とリンクさせるなど)
◎療養中の定期報告のルール化
 (産業医による定期面談が望ましい。産業医に依頼できない場合でも、上司や人事担当者が面談し、情報を共有しておくこと)
◎復帰時には「復帰可」の診断書
◎復職前に主治医と連携をとり、仕事内容を主治医に伝達
◎復帰の状況が整っているか、生活記録票などに記載してもらい提出

主治医・産業医との連携がカギ

さて、休業規定/復職規定を定めたあと、実際の運用にあたってとくに重要になってくるのが、主治医や産業医との連携です。復帰可の診断が出たものの、やはり復職が難しい健康状況だったとなると当事者全員のダメージが大きいので、主治医に就労に関する情報共有をして、主治医に仕事の内容をよく理解してもらったうえで、本当に復帰可能かどうかを診断してもらう。
休業中に産業医に何度か面談してもらうことも重要です。復帰直前になって、これまで会ったこともない休業者と復帰に向けたコミュニケーションを取ってほしいと要求してもスムーズにいきません。産業医の定期面談が難しい場合は、上司や人事担当者の定期的な面談結果を産業医と情報共有をすること。そして、復帰前の面談では、起床就寝の時間や日中の行動などを記載した生活記録票をもとに、きちんと体調管理ができているかなどを話し合う場を持つなどの体制を作っておくことは、スムーズな復帰に向けて欠かせません。
事前に産業医と良い関係を構築しておくことが大切です。日本医師会認定産業医の資格を持つ医師は全国に約8万人いるなかで、日本産業衛生学会の専門医または指導医は約500人、日本精神科産業医協会の認定会員は約230人となっており、産業医の第一線を担うのは病院やクリニックの先生です。
メンタルヘルス不調者が出たからサポートしてくれ、といきなり依頼しても、なかなか引き受け手がないのが現実ですから、不調者が出る前から相性のよい先生を見つけて、仕事内容や従業員の状況を理解してもらうなど、良好な関係を構築しておくことが重要です。

次の基調講演はこちらから

▲ ページ上部へ