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こころの“あんしん”ゼミナール Vol.2 シンポジウム報告

ストレスチェック制度の概要

いま森本先生から「プロの産業医が少ない」というお話がありました。私は産業医科大学産業医実務研修センターで9年間、産業医の育成に携わっていたこともあり、この問題を議論したいところですが、与えられたお題がストレスチェック制度をどう活用していくかということですので、おさらいを兼ねて、まずはストレスチェック制度の概要から簡単にお話しましょう。
近年の仕事上のストレスを抱える労働者の増加や、うつなどによる自殺者の増加を受け、厚生労働省が平成18年3月に公表したのが、メンタルヘルス指針(「労働者の心の健康の保持増進のための指針」)です。ここではメンタルヘルスケアの重要性を認識し、「心の健康づくり計画」を作成すること、そして4つのメンタルヘルスケアを推進し、1次予防(メンタルヘルスケアの重要性の気づきや職場環境の改善)、2次予防(メンタルヘルス不調の早期発見・早期治療)、3次予防(職場復帰のための支援)に力を入れることが謳われました

①セルフケア…労働者自身によるストレスへの気づき、ストレスへの対処など
②ラインケア…管理監督者による職場環境の改善、個別の相談対応
③産業保健スタッフ等によるケア…産業医、衛生管理者による心の健康づくり対策の提言および推進、ラインケアへの支援
④事業場外資源によるケア…事業場外の機関、専門家による医療、サービス

ストレスチェック制度は、このうち1次予防を強化するとともに、うつ病をスクリーニングして2次予防とすることを目指したもので、従業員自身が自分のストレス状況に気づくことで、ストレスをためすぎないように対処したり、ストレスチェックの結果を集団ごとに集計・分析して職場におけるストレス要因を評価し、職場環境を改善すること(1次予防)、これにより「早期発見・早期対応」に結びつけ、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ(二次予防)ことがねらいです。

企業の状況に応じた「オーダーメイド」な体制づくりへ

ところでストレスチェックの義務化の対象となる事業所は約15万社で、日本全国の事業所の2.5%程度にすぎません。そして、実施義務のある企業の60%が50~100人規模の中小企業です。この規模の企業は、産業医の選任が義務づけられているものの、いまだ選任していない企業も多いといえます。知り合いの社会保険労務士から相談を受けて訪問調査を行いましたが、健康診断結果も確認できていない、結果を見ても意味が分からない、ストレスチェックを実施できる体制も不十分なうえ、人材も不足している実態を痛感しました。
企業によってメンタルヘルス対策への取り組み段階が大きく異なる現状では、企業の状況に応じた「オーダーメイド」な体制づくりが必要で、そのためにも企業の実情に詳しい産業医が求められるのですが、産業医が絶望的に少ないなかでどのように進めていくかは今後の大きな課題です。
とはいえ、ストレスチェックが企業の安全衛生管理の体制を整備していくためのきっかけになるのは間違いなく、従来の場当たり的な対応から、メンタル不調を未然に防ぐための根本的な職場改善につなげるよう企業の取り組みを進化させるために、さまざまな現場の情報を調査・集約して、グッド・プラクティスを発信していくことに力を入れていきたいと考えています。

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