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こころの“あんしん”ゼミナール Vol.2 シンポジウム報告

おかしいことをおかしいといえる「風通しの良い職場」づくり

私は36年間,労働基準監督官を務めたのですが、署長になったとき部下との関係でメンタルヘルス不調になり、これは重要な問題だと認識、猛勉強して産業カウンセラーの資格を取りました。そして「部下が休み始めたら管理者の負け」という気持ちで10年間署長を務め、その間メンタル不調者を一人も出さなかったことが自慢です。
この経験から声を大にして申し上げたいのは、メンタルヘルス不調者が出にくいのは、「おかしいことをおかしいといえる、風通しの良い職場」であり、そうした職場をつくるうえで、上司、すなわち管理監督者の責任が非常に大きいということです。上司に「そんなことやってられるか!」と言える職場であれば、メンタルヘルス不調になりにくい。その声が押さえ込まれることが続くと、内にこもって精神的なダメージになってしまうわけです。
データを見てみましょう。うつ病などの精神障害等の労災の請求は年々増加しており、平成27年度は1515件でした。このうち労災と認定されたのは472件で、請求件数の約3分の1です。では精神障害での労災申請のうち、どのような項目での申請が多かったかをみると、第1位は「上司とのトラブル」、第2位は「ひどいいじめ」となっています。両者の境界は曖昧ですが、職場の人間関係の問題が大きいということです。

管理者の役割は「挨拶、声かけ、聴く、つなぐ」

さて、風通しの良い職場をつくるために管理者が心がけたいのが、「挨拶、声かけ、聴く、つなぐ」ということ。
まずは挨拶ですね。挨拶というのはポジティブ・ストローク、つまり肯定的な働きかけで、挨拶が飛び交う職場ではメンタルヘルスの問題は起こりにくい。挨拶をしたのに返事がないと挨拶をやめてしまいますから、管理職手当には挨拶手当が入っていると思って、管理職から率先して挨拶をすることが大切です。
声をかけても部下が下を向いてボソボソとしか答えない、ちょっと元気がないな、と気づいたら、「どうしたんだ」と声をかけますよね。そして「実は・・・」と部下が話し始めたら、とにかく一生懸命に相手の話を聴く。話を聴くだけでもかなり効果があります。2015年の「労働安全衛生調査」でも、ストレスを実際に相談した人にストレス解消状況を聞いたところ、約3割がストレスが解消され、「解消されなかったが気が楽になった」という回答が約6割でした。日ごろから部下に関心を寄せて部下の変化を見逃さずに声をかけ、話を聴くことがいかに大事かということですね。
そして相談内容が自分では手に負えないときは、主治医なり産業保健スタッフなどに早めに相談する。これが「つなぐ」です。
皆が気持ちよく働いて、いい仕事をする職場づくりを目指してください。

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