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第1回 新入社員の健康管理と「五月病」

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第1回 新入社員の健康管理と「五月病」



【執筆者:神山 昭男(こうやま あきお)先生】

プロフィール
精神科医 産業医 医療法人社団桜メデイスン有楽町桜クリニック院長 日本産業精神保健学会理事(第28回大会長) 日本精神神経科診療所協会副会長 東京精神神経科診療所協会前会長 日本産業保健法学会理事
日本産業ストレス学会第24回大会長 日本精神神経学会第115回総会副会長


1. 新入社員と五月病

4 月に入社して5 月のゴールデンウィークが過ぎる頃に、新入社員にはいろいろな変化が出てきます。新入社員の健康管理として大切な時期といえます。
「五月病」は医学上の病名ではなく、職場や生活面のストレスを契機として生じる心身の不調をさし、一種の環境不適応状態といえます。典型例では身体面の頭痛、めまい、倦怠感、吐き気、下痢、腹痛、心理面の情緒不安定、意欲、集中の低下、不眠、行動面の遅刻、早退、欠勤、離席の増加などが認められますが、本人がストレスのせいと自覚していない場合もあります。


2. 適応は環境と個人要因の組み合わせ

新入社員の適応をリードする職場は、適応には環境と個人の双方の要因が大きく作用することを理解しておきましょう。
例えば、内向的で新しい人間関係が苦手な社員には優しく静かに教えてくれる先輩の存在が大助かりです。反対に外向的で人間関係作りが得意な社員がきつい業務を指示されて結果のダメ出しをされたら、めげてしまい不適応のリスクが高まります。社員の特性に応じた教育的配慮で安全に適応をめざすことが重要です。


3. 新入社員の健康不調の3つのタイプ

最近、この時期の健康不調には大きく3つのタイプがあります。第1は初めての発症で環境要因が強い場合です。五月病と同様に健康面と労務面に不具合が生じます。職場や生活の困難要因を探り、適応しやすくする調整と本人のケアが大切です。
第2はやはり初めての発症ですが個人要因が強い場合で、主として労務面に支障が出ます。職場で配慮をしても学習効果がでにくい、会話による意思疎通が難しいなど、個人側の適応力に課題が目立つ場合です。 健康面にも問題があると職場が認識しにくい傾向があります。
第3は以前の病気が再発、悪化した場合です。投薬、診療の実績が入社後に明らかになる場合です。背景には高校生や大学生のメンタルヘルス不調者の増加があります。


4. 不適応の予防と早期対処

新入社員は基本動作が身についていないので特に労務面も健康面も配慮が必要です。新入社員が相談しやすい担当者の配置、定期面談の実施、上司の支援力向上研修など環境作りが第一歩です。
もう一つ重要な点は、身体面、心理面、行動面の全体から見ていくことです。メンタル系の病気でも心身両面に症状が出ます。また、診断、治療の難易度は高まる傾向があります。職場が相談できる専門医を確保することをお勧めします。


【参照:インデックス】