中級編6リニューアル

      
 

医師・医学博士、社会保険労務士、労働衛生コンサルタント
あんしん財団と産業医科大学産業医実務研修センターとの共同研究メンバー

大阪市で産業医事務所を開業し、社会保険労務士資格を持つ
開業産業医として、労働衛生に関わるコンサルティングや
企業の嘱託産業医、セミナー講師、執筆等を行っています。

                   

適切な休業期間とは?

メンタルヘルス疾患では、長期の休業が必要な場合も少なくありません。
休業可能期間が短い場合、適切に復職し再度、力を発揮してくれることが少なくなります。
一方で、休業可能期間が長い場合には、職場復帰率が高まることが期待されますが、特に
中小企業では休業中の従業員の社会保険料の負担感が強いという話を耳にし、安易に休業
可能期間を長くすることも難しいと考えます。
       

 

   

制度上の休業可能期間の上限について過去の調査結果があります※1。
この調査では、業種や企業規模別の休業可能期間の割合がありますので参考にされてくだ
さい。
企業規模が大きくなるほど休職可能期間が長くなる傾向がみられ、正社員が1000人在籍
する事業場では、1年半以上2年未満が10.6%、2年以上が30.7%となっています。
一方で、30人未満の事業場ではそれぞれ7.3%と4.5%です。
一方で、メンタルヘルス疾患の場合、職場復帰までにどの程度かかるものでしょうか。
製造業主体の民間企業で18ヵ月の追跡調査を行ったところ※2、メンタルヘルス疾患に
おける復職率は、3ヵ月で35%、6ヵ月で58%、12ヵ月で71%、18ヵ月で75%となって
います。
なお癌をはじめとする悪性新生物では、それぞれ47%、61%、72%、76%で、メンタル
ヘルス疾患よりも若干早期復帰の傾向にあります。
本調査は、12ヵ所の企業が含まれる多施設研究ですので、業種や復職の基準、療養中の
会社の支援状況などが異なる点に留意は必要になりますが、参考になる調査だと思います
ので紹介しました。
               

   

※1 独立行政法人 労働政策研究・研究機構 職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査 p140 2012.

※2 西浦千尋ら、民間企業における長期疾病休業の発生率、復職率、退職率の記述疫学研究、財団法人産業医学振興財団 平成27年度調査研究助成報告集 p53‐64 2015.